他校生

「あれ?」

「何?」


私達は公園のベンチを後に歩き出した。



この前、紗香が言ってた事を思い出した。
工藤くん……“ハナちゃん”が好きだったんじゃないの?


「あの……紗香から聞いちゃって……工藤くん好きな子がいるって、公言してるって…」


「いや、だから……朱里ちゃんだって。公言……いや、そうか。色んな人に聞いちゃったもんな……」


色んな人に聞いちゃった?
どういう事だろう。


「“ハナ”ちゃんって……」

私がそう言うと、工藤くんが咳き込んだ。


「なんだよ、そんな事まで!あー、ちょっといい?」

工藤くんは再び自転車を停めると
私の手からハンカチを取り、綺麗に折り畳まれていたそれを、バサッと広げた。


落ち着いた色合いのハンカチ。

女子高生にしたら、渋いというか、何というか……


まぁ、おばあちゃんのだから。


「ここ……」

工藤くんが指差した先には

アルファベットのブランド……デザイナーの名前。


「ああ!」

「これ、誰のハンカチ?」

「それ、名前だと思ったんだ!」


悪いとは思ったけれど……

そうか、男子はデザイナーの名前とか知らないのか。

可笑しくて笑い過ぎてしまった。


「……なんだよ」
不貞腐れた工藤くんに


スマホで検索して、そのデザイナーの写真を見せた。


ハナ……って紗香は言ってたけど





「うわ!マジ!?俺……全校生徒に聞く勢いで、この人探してた!」


「あはは!!やだ、もー!!」


もう一度笑いが止まらなくなった私に


「いーんだ、見つけたから」


そう言って、そっと撫でられた髪に

一瞬で笑いが止まった。


「……ちなみに、これ、おばぁちゃんのハンカチ。うちのおばぁちゃん、名前がデザイナーさんと同じ“はなえ”だから、このブランドお気に入りなの」


「ま、いっか」

「うん」

「なかなか会えなかったから、こんな短期間で……」

「うん」


繋いだ手に少し、力を込めた。


「好きに」

「なったのかも」

「しれない」

「し?」


交互にセリフを言い合って微笑みあった。





「あー、同じ高校が良かったな」

「ヤだよ、俺。渕上と話してんの見るとイライラする」

「私だって、紗香と話してるの…嫌」


「でも、話すだろ?」

「でも、話すよね」


「「他校も、悪くない」」





「連絡、する」

この日から


私達は……

お互いに探すのを……やめた。