他校生

「地味に痛かったけど……そんな事より……」

じっ、と見られて

そわそわと目を逸らした。



「同じ高校じゃないなら、あの時にそう言えよ」

「ごめんなさい」

「はは!何回謝んだよ!」

「ご、ごめ……」


あの日と同じように、彼は人懐っこい笑顔を向けた。


「でも、石橋の友達とはなぁ」

「そ、あれは“石橋”の制服。可愛いから着てみたかったんだよね」

「んー……それも、いいけどね」



それから暫く沈黙が続いた。

都会の濁った空気から離れ
ここは緑が多く、木陰になると、快適。



学校の賑やかさとは違う、しん、とした空間。



彼も言葉を探して、静かなのか

それとも私みたいに何を話していいか分からないのかな。




聞きたかった事って、これだよね?

じゃあ、ハンカチを返して貰ったら


帰ったら方が……いいのかな?



「聞きたいことが、あって……」

工藤くんが、そう言ったことで


「え?あの日の事……じゃなかったの?」

「それ以外にもあって……」

さっきより少し、空気が重たくなった気がする。



「あれから……渕上とはどうなった?」

………あれから?

「どれから……?」

「“アリ”って事は……朱里ちゃんは今、渕上の“彼女”って事?」


“アリ”という表現には聞き覚えがあって……




『「俺が好きだって言ったらどうする?」ってふっちーが言ってたよね。それに、朱里は“アリ”だって……』


『ふっちーと態度と、あの告白ぽいセリフ、あの場にいた皆が……ふっちーと朱里のこと誤解したと思う』



“あの場にいた皆”

には、工藤くんも含まれていたんだ。


“アリ”はふっちーの事ではなくて
長い付き合いなのに今さら告白することに対して

問題ないって意味で使った。


ふっちーと紗香の気持ちを勝手に話してはいけないだろうけれど……




「……彼女じゃない」

「断ったって事?」

「断ってないよ」




「意味、分かんねぇ」

「ふっちーが好きなのは、私じゃない」

「……え?」




「あの時、例え話をしてただけだよ。告白されたわけでもないんでもない」

「マジ!?」


プッシューと気の抜けた炭酸のように脱力した工藤くんの顔に

必死で説明した。


「だいたい、“告白”するなら練習の合間のお昼の、誰に聞かれるか分からないグラウンドでするわけないじゃない!そうだなぁ、ちゃんと、呼び出して、誰も居ない二人きりの静かなとこ、例えば……ここみたいな!場所………で………」


「ここ……みたいな…………?」



ここは……静かな、二人っきりの場所……


私が顔を上げると同時に

彼も顔をこちらに向ける。



その仕草はとてもゆっくりで……

静かに視線が重なった。