「工藤……モテてるよ」

「だろうね」

私より早く、さっちゃんがそう言った。


「モテる要素しかないよね、イケメンだし。朱里の事、既に“朱里ちゃん”って呼んでたよ。すごくない?」


……確かに。

でも、それは……私の名字を知らないからな気もする。
下の名前だけ、聞かれたから、伝えた。


「でも、好きな人いるんでしょ?」

「そう、あいつスッゴいオープンで……その……」

「いいよ、気にしないで。聞きたい」

言いづらそうな紗香にそう言った。



「私は知らない子なんだけど…同じ学年の他クラスにいるみたい。“はなちゃん”とか呼んでた」


工藤くんの好きな人が紗香じゃなくてホッとしたのもつかの間で

また、胸に黒い幕が下りたみたいだった。



「何か毎日の様に会いに行ってた……」


それに胸が痛い。


「彼女、ではないの?」

「ではないみたい」

「そんなに好きなら……入るスペースあるのかな」

ため息を吐くように、そう言った私に


「朱里は漸く知ってもらえたんだからさ!」
さっちゃんがそう言ってくれた。



「情報、回すから!それに、今度ふたりで会うんでしょ?」

紗香も励ましてくれた。



「そうだね。ここで完結させるんじゃダメだよね……本人に……」

「うん、本人に聞こう!私もそうするから」

紗香が明るくそう言った。




本人に、聞く。

それは、もう……“告白”というのだけれど


私も、紗香も、分かっていた。



もう、このままでは終われない事を。


むっちゃんのような終わらせ方もあるのだろうけれど


私はもう少し、彼と向かい合ってみたいと思った。



スマホのメッセージアプリを開き


何度目か分からないけれど……
工藤くんの後ろ姿のアイコンを見て


向かい合いたいと思った。




紗香に関しては、紗香の決心が先なのか

それともふっちーの決心が先なのか


どのみち誰かの気持ちの犠牲はあるのだけれど


気まずいながらも、二人並ぶ姿を想像して、こちらが照れ臭くなった。



…………あれ……


ふっちーが工藤くんから貰ったメッセージは何だったのだろう。



工藤くんがAくんじゃ無かった。


だとしたら?


3つに分けられた“恋愛系”の工藤くんからのメッセージは……


工藤くんのメッセージ、それから、私に“聞きたいこと”それは全く繋がらなくて不思議だけど


それも……本人に、聞く事にしよう。