「私は告白をしない決心をしました」

お弁当を広げて、むっちゃんがそう言った。


さっちゃんも、私も、セイも

手を止めてむっちゃんに注目した。



むっちゃんはパクっとミートボールを口に入れて……何も無かったかのように食べ始める。


「告白について、あんなに熱く語ってたのに……?」

疑問をそのままぶつけると


「紗香って、可愛いね」

にっこり笑ってそう言うと


「私さ、ちぃこの時で学んだつもりだったんだけど……何か紗香は応援したくなる。だから、告白せずに諦めようと思う」


「え、でも……むっちゃん」


「うん、私……ふっちーが誰を好きか、分かった」

むっちゃんの言葉に誤解を思い出し


「わ、私じゃないからね!」

慌ててそう言うと、むっちゃんが可笑しそうに笑う。


「何だ、分かってるんだ朱里!確かに朱里かなぁとも思ったけど……紗香、だよね?」

セイがキョロキョロして

私は正直に頷いた。



「うん、告白しようと思ってて……勿論、私のタイミングでね。だけど、私が先に告白しても、紗香の後に告白しても……ふっちーに嫌な思いをさせる気がした。紗香にも。私の事を気にして、すんなり行かなくなったり……ま、そんな、影響力があるかは分からないけど、だけど……そうしようと思ったの」


「むっちゃんが、決める事だからね」
さっちゃんがそう言う。



「私、紗香の事好きだわ。それに……ふっちーが“むっちゃん”って、呼んでくれた事で80%くらい満足しちゃったんだよね」


むっちゃんはスッキリした顔でそう言った。




「もっと言うと、ちぃこに私もふっちーが好きって言った時に……告白分くらいの勇気を使い果たした気もする」


「そっか、むっちゃん、ありがとう」


「はは!何で朱里がお礼言うのよ」


「分かんない。けど、何かありがとう!」


「朱里は告白しなよね」


「うん、今度……二人で会うから……その時は無理にしても、その次があれば……」


「会うの!?その次は自分で作らなきゃ!」


むっちゃんにそう言われると

私も頑張らなきゃって気がして



「うん」


そう言った後に、少し笑えた。



「よーし!今日はこれだ!」

セイが、プリッツのローストをバラバラと広げた。


それから……教室に戻ってきたふっちーにも


「お一つどうぞ」

と、声を掛けた。



「お、今日はロースト?これも、好きだな」


そんなふっちーをむっちゃんが嬉しそうに見ていた。