「なぁ、先輩がお前の事、可愛いって言ってたけど……」

「今は……いい……かな」

「だよな」


例え、工藤くんが紗香を好きだとしても


私は、工藤くんが好きだった。



「あ!むっちゃんは?彼氏いるっけ?」

「……いないよ」

これまたややこしい質問を……
ため息一つ。
それで、足を止めた。


「むっちゃんにも、聞かないでね」

「え、ああ……うん、分かった」

「むっちゃんを可愛いって言ってる先輩もいたわけ?ギャラリー見てないで練習しろよ!」

自分たちのことを棚に上げて毒づいた。
もう、これ以上ややこしくしないでくれ!



「ああ、そ。1個上の先輩だけどな。可愛いって、むっちゃん良い子だし。先輩もかっけー……」

「人の事より自分の事!」

「……そだな。工藤がライバルって嫌過ぎる。めっちゃ不利だな、俺」


そう言うふっちーに眉を寄せた。

何かイラっとして。


「何で!?」

このニブチン!!



「毎日、会えないし、連絡先知らんのだ、俺…」


「……!!」


奥手か! お前ら!!



直ぐ様その場で、ふっちーに紗香のIDを送った。



「いや、勝手に聞いたら怒られんべ?」


「怒られろ、バーカ」


スタスタと歩く私をふっちーが長い足で追い付く。


「なぁ、何怒ってんの?」

前に回り込むふっちーに、再び足を止めた。


……本当だ、何怒ってるんだろう。



「他校だからって、不利だとは限らないよ。それから……紗香は、ふっちーが私の事を好きだと誤解してるかもしれない」


そうだ、これを伝えなければ


「え、俺お前の事好きじゃないけど?あ、悪い、嫌いとかそーじゃなくて……」


「そこ、どうでもいいわ!」

「え、酷いな、お前……」

「あ、ごめん。じゃなくて!!紗香の前で緊張するからって、私に話しかけるからだろう!」


ふっちーの顔!

図星か!

そして、紗香と同じタイプか!



「とりあえず、誤解は誤解なんだよ。解いといて。お陰で私達……今ギクシャクしてるんだよ」


「あー……工藤の事もあるしな」

そっちは分かってるのかい。

「そ、宜しく!」

そう言って、ふっちーのスマホを指差した。


“紗香に連絡しろ”の意味を込めて。



私も……紗香と直接話さなきゃ鳴らないけど。

紗香とこんな風に拗れるのは、嫌だから。