「そんな話じゃ、なくて」

そう言って、私も頷いた。
ふっちーの真顔に、面白い話でもないのだろう。

そもそも他の誰かに聞かれていい話なら、教室で喋ってるだろう。


「工藤からのメッセージ……」


ふっちーにスマホを渡され、工藤くんからのメッセージを読むように促された。


『お疲れ』のスタンプの後…

『俺なりに気づいた事があって、ごめん、喋ってるの聞こえた』

『やっぱり俺も諦められない…というか、気になるから、それを渕上にも言っておくね』

『せっかく友達になったのに気まずくなるのも嫌だから』

『マンツーマン楽しかった!おんなじ1年だと思わなかったし、またやりたい!』


ぶつ切りに4つのメッセージ。

読む毎に、胸が……痛い。

“俺も諦められない”
その言葉が強く胸を締め付けて、目の前に暗い幕が下りてきたみたいだ。



「最初の3つは……恋愛系。最後の1つはバスケ系。一気にメッセージ来たもんで……俺は最後のバスケ系にしか返信出来てない」

ふっちーがため息を付いて、片手で顔を覆った。


「これ、石橋の……事……か?」

「うん、そうだと思う」

「アイツも……石橋の事が好きなのか」


ふっちーがハッキリとそう口に出した事で……
それに私が驚かなかった事で


「……知ってたのか?」

「うん」


私達は壁にもたれたまま。

遠くの方で誰かの笑い声だけが聞こえた。


「……同じ高校っていいな」
ボソリとふっちーがそう言う。


「そうかな?私は、近くで二人を見なくて済んで良かったよ」

そう言うと

「かもな……隣の席だって言ってたし…工藤って…」

あ!ふっちーがそう言い出した事で


私は片思いだけど、ふっちーは両思いな粉とに気づいて

落ち込ませてはダメだと思った。

いや、でも、どうしよう。

“工藤くん、もう振られてるよ”とも“紗香はふっちーが好きなんだよ”とも言えないし……


どうしよう、どうしよう

頭の中でオロオロしてると


「そういや、工藤はお前に何の用だったわけ?」

そう聞かれ


「聞きたいことがあるって言われて……」

「何だ?お前と工藤なんて接点ないのにな」

「そうなんだよね、あるとしたらハンカチ…の件?」


「覚えてたならその場で言やぁいいだろ?わざわざ改めて呼び出す?」


「うーん……」

「ま、また教えて」

そう言われて頷いた。




「行くか、そろそろ」

「うん」


人気のない場所を二人で並んで歩いた。
どちらも、足取りは重かった。