人気(ひとけ)のない校舎の一角。

そこにふっちーとふたりで居た。


「ちょっと、顔かせ」

上級生が下級生をシメる時のセリフだな、と思いながらも

二人でしか話せない内容であることは分かった。



「はっ、告るのに呼び出す見たいだな」

ふっちーの発想が私より色気があって鼻で笑ってしまう。

「何だよ」

「いや、私はシメられる感じだなって思ったたらさ、ふっちー割りと色恋……」

そこまで言いかけて気づく。

そっか、この人はそのパターンで呼び出される事が多いのか。


「羨ましい限り……」

そう付け加えると

少し恥ずかしそうにしながら


「ちっ、まぁ、いいや。今日はどっちも関係なくて……だな」


「うん……分かってる」

ふっちーに並んで、私も壁にもたれた。

ふっちーが話し出すのを待って、横顔を見上げる。

うーん……やっぱり格好いいな。


そして、こんな時はやっぱり……紗香と違う学校で良かったと思うし、むっちゃんとも違うクラスで良かったと思う。

友達の好きな人だからといって、私が避けるのは変だと思うから。


何もやましくないのに、見られたら困るって
変だと思うから。


紗香も今ごろは工藤くんと話しているかもしれない。


それに胸は痛むけれど、
だからといって、紗香に工藤くんと喋らないでとは言えないし、思わない。



「……アイツ、良い奴だな。……工藤」

「え、うん。そう……だね」

そうだってハッキリ言えるほど、距離は近くないのだけれど

私も……良い人だなって、思う。




「この3日間の練習で、アイツと喋るようになって、連絡先も交換した。バスケの事……とか……まぁ、話すようになって……」


「ああ、人懐っこい感じだもんね」


「ポジションも同じだし、勉強になった。いい刺激ってか、まぁ、プライドは折れたけど」


「ポッキーン」


「……お前……面白がってるな?」


「お前は、調子に乗ってたんだな?モテるし、1年でスタメンだし」


「モテるは関係ないだろ!まぁ、そっちも、ちょっと……いや、結構……乗ってたけど」

ばつが悪そうに、頭をかいて、ちょっと赤くなった。


「モテてるのは、事実だよね。高校デビュー!?」


「アホか!昔からモテてるわ!」


校舎に反響して、モテてるのが響いた。


「自分で言っちゃう。今のでファン減ったな」


ふっちーがジロリと睨み、咳払いをした。