大してよく眠れなかったというのに、寝坊することなく起きられた。


昨日のアレコレを思い出すと、既に鼓動がヤバい。


スマホの通知音に飛び付くと

…当然彼ではない。よね、そりゃあ。


さっちゃんだ。




「ちょっと出てこれない?」


そのメッセージにOKの返事をして、すぐに外へ出た。




ちょっといつもよりめかしこんださっちゃんに


「あ、今からデート?」

そう聞くと、少し頬を赤らめた。



「いや、その前に!聞きたい事はいっぱいあるけど!紗香の、件からっ!」


バンッとテーブルに手を着くと前のめりにさっちゃんに


紗香から連絡があったのだと…思った。



「何か言ってた?紗香」


「大したことは何も。だけど……あんた達まで気まずくなるのは勘弁してよ」


「違うんだよ、さっちゃん!」


「ねぇ、紗香は……悪くないよ?」


さっちゃんは私と紗香が気まずくなったのが工藤くんの事だと思ってる。


まぁ、工藤くんのせいといえば、工藤の、せい…か。


「ふっちーが誰を好きか、分かる?」

先ずはそこから話そうと思う。
さっちゃんはこの件に対しては無害だし、変に喋ったりもしない。



「……紗香……だと、思ってた」

さっちゃんが俯くと、ドリンクを一口。それからチラリと私を見た。


「“思ってた”って何?絶対そうでしょ」

私がそう言うと、さっちゃんが眉をピクリと動かし…


「ふっちーから、直接聞いた?」


「うん、昨日…コンビニ行く前に」


「そっか、じゃあ……ふっちーが好きなのは紗香で間違いないんだね?」


「うん、そうだよ」


「じゃあ、何でそう言わないの?」


「え?私から言えないでしょ?ふっちーが自分で言うか、紗香が聞くか……それに、むっちゃんもいたでしょ?言えるわけないじゃん」


「……そうか、そうだね。朱里が正しい。……けどさぁ……」


「ん?」


「ここ最近のふっちーと朱里の様子……仲良すぎるし、じゃれてるし、朱里はまんざらでも無く、赤くなってるし……」


「え……」


「それに………」


「それに……?」


「『俺が好きだって言ったらどうする?』ってふっちーが言ってたよね。それに、朱里は『アリ』だって……」


「それ、さっちゃんの所まで聞こえてた?」


「うん、堂々と告白かよって思ったよ、あそこにいた全員」


「紗香に“今更”だろってふっちーも悩んでんのよ」


「そっち!?」


「そっち!」


私もこくりと頷いた。




「朱里も……悪くないね」



さっちゃんは


「誰も……悪くないね。だけど……言えないね」


こう言って、頭を抱えた。



「ふっちーが、さっさと告ればいいんだ!」

名案に声を高くしたけど


「むっちゃんは……」

「ああ……」


二人で頭を抱えた。