3日間に渡る合同練習が終わり……
今日以降は“約束”でもしない限りは“偶然”会うことくらいしかないのかもしれない。
タオルでガシガシ汗を拭く姿に
きゅっと音がしそうなくらい、心臓が絞られる。
昨日までと違うのは
この後、工藤くんと“約束”があるって事
階段を降りようとすると
ストレッチを終えた工藤くんが駆け上がってきた。
「朱里ちゃん!」
名前を呼ばれて、心臓が止まりそうになる。
「ごめん!この後、ミーティング入ったから遅くなる。今度、時間作って!」
ごめん!と拝むポーズの工藤くんの後ろから
「工藤、ナンパしてんじゃねーよ!」
K高のチームメイトから声をかけられ
「違うっての!用事だ、バカヤロウ!!」
工藤くんがそう言って、固まる。
片手で顔を覆って…
少し赤面した。
「バカヤロウって……初めて言ったわ。恥ず!いや、朱里ちゃんも恥ずかしいよな、目立つわここ。ごめん」
「あ、うん。大丈夫、ありがとう」
何にお礼を言ってるのか、私もよく分からない。
「連絡先!」
「あ、ペン……」
バッグから取り出したペンを渡すと
「ごめん、書いていい?」
工藤くんが月バスのはじっこに 自分の連絡先を書き込んだ。
「サインもらってる人みたい…」
アイドルとファン
の、つもりで言った。
滑らかな綺麗な肌に、爽やかな汗が光る。
「あー、いつか載る側になりたいな」
工藤がそう言って、爽やかに笑った。
階段から落ちなかったのが奇跡。
そのくらい、そこからはよく覚えてもいない。
すれ違いざまにふっちーが
「良かったね」
って言ってきたのがぼんやり聞こえて
更に顔が赤くなった事は想像出来た。
両手でしっかりと抱き締めた月バスは……
以前にも増して、私の宝物になったし…
もう二度と学校には持ってこないし、
もう二度と誰にも触らせるつもりはない。
赤くほてった顔が緩み、月バスで隠した。
むっちゃんが温くも優しい目でこっちを見てきて、ますます…月バスが手放せない。
「朱里はさぁ、好きな人がいるのに……どうしてふっちーからの告白が“アリ”なの?」
紗香がほんの少し口角を上げて、そう言った。
昼休みに私とふっちーが話していたのが聞こえていたのだと、分かった。
だとしたら……
それは誤解で…
だとしたら……
工藤くんにも聞こえていたのかもしれない。
「紗香、それは…」
私が言い終わる前に、紗香は背を向けた。
私は、紗香に何て言ったらいいのだろう。
このまま私達は……
どちらからも連絡しなかった。
今日以降は“約束”でもしない限りは“偶然”会うことくらいしかないのかもしれない。
タオルでガシガシ汗を拭く姿に
きゅっと音がしそうなくらい、心臓が絞られる。
昨日までと違うのは
この後、工藤くんと“約束”があるって事
階段を降りようとすると
ストレッチを終えた工藤くんが駆け上がってきた。
「朱里ちゃん!」
名前を呼ばれて、心臓が止まりそうになる。
「ごめん!この後、ミーティング入ったから遅くなる。今度、時間作って!」
ごめん!と拝むポーズの工藤くんの後ろから
「工藤、ナンパしてんじゃねーよ!」
K高のチームメイトから声をかけられ
「違うっての!用事だ、バカヤロウ!!」
工藤くんがそう言って、固まる。
片手で顔を覆って…
少し赤面した。
「バカヤロウって……初めて言ったわ。恥ず!いや、朱里ちゃんも恥ずかしいよな、目立つわここ。ごめん」
「あ、うん。大丈夫、ありがとう」
何にお礼を言ってるのか、私もよく分からない。
「連絡先!」
「あ、ペン……」
バッグから取り出したペンを渡すと
「ごめん、書いていい?」
工藤くんが月バスのはじっこに 自分の連絡先を書き込んだ。
「サインもらってる人みたい…」
アイドルとファン
の、つもりで言った。
滑らかな綺麗な肌に、爽やかな汗が光る。
「あー、いつか載る側になりたいな」
工藤がそう言って、爽やかに笑った。
階段から落ちなかったのが奇跡。
そのくらい、そこからはよく覚えてもいない。
すれ違いざまにふっちーが
「良かったね」
って言ってきたのがぼんやり聞こえて
更に顔が赤くなった事は想像出来た。
両手でしっかりと抱き締めた月バスは……
以前にも増して、私の宝物になったし…
もう二度と学校には持ってこないし、
もう二度と誰にも触らせるつもりはない。
赤くほてった顔が緩み、月バスで隠した。
むっちゃんが温くも優しい目でこっちを見てきて、ますます…月バスが手放せない。
「朱里はさぁ、好きな人がいるのに……どうしてふっちーからの告白が“アリ”なの?」
紗香がほんの少し口角を上げて、そう言った。
昼休みに私とふっちーが話していたのが聞こえていたのだと、分かった。
だとしたら……
それは誤解で…
だとしたら……
工藤くんにも聞こえていたのかもしれない。
「紗香、それは…」
私が言い終わる前に、紗香は背を向けた。
私は、紗香に何て言ったらいいのだろう。
このまま私達は……
どちらからも連絡しなかった。



