「何?」

私も……紗香の方をちゃんと見て、そう聞いた。



「朱里の……一目惚れした、ハンカチの彼は……工藤でいいんだよね」

「うん」

「朱里は、工藤が好きなんだよね?」

「うん、私は……工藤くんが好き」


紗香の目を見て、ハッキリとそう伝えた。


さっき言えなかった後ろめたさと罪悪感の代わりに

真っ直ぐに紗香の顔を見て


私はそう伝えた。



「そっか。分かった」

紗香はホッとしたようにそう言った。


だけど、意を決したようにもう一度私の方を見ると



「何ですぐに言ってくれなかったの?」


そう聞いてきた。


気づかなかったなんて、下手な言い訳はするもんじゃないな。


すぅっと息を吸うと、正直に言った。



「工藤くんに好きな子がいるの、知っちゃったからだよ」


紗香は少し驚いた顔をして、はぁ、と息を吐いた。


「だとしても……」

「だとしたら、紗香は私に何て言った?“工藤くんの好きな人”教えてくれた?……言いづらかったよね、きっと……」

「朱里は、『ふっちー好きな子いるよ』って……」



「ね、それは…『本人に聞く』んでしょ?」
むっちゃんが、なだめるように、私と紗香の間に入った。



「紗香に余計な心配かけたく無かったんだよ、朱里は。なんせ、紗香……今、自分の事でいっぱいいっぱいでしょ?……それに、言おうと思ってタイミング見てたとこだったの。これ、本当だからね?」


むっちゃんが説明してくれて
紗香が頷く。



「でも、むっちゃんは知ってた」

「いや、私も今日紗香が来るまでに聞いたばっかだよ!」

「そうなの?」

「うん……ごめん、私……こういうの初めてであんまり上手く相談も出来なくて、ごめん」


「はは!何回謝んの。だけど、そうだね。朱里の恋話、初めて聞くかも」

紗香がからかうように笑った。





「ねぇ、ふっちー…好きな子いるよね?」

顔を真顔に戻した紗香の言葉に頷く。



「そっか、そりゃあ、いるよね」

紗香は目に見えて落ち込んだけれど……

むっちゃんもいるし

私は何て言っていいか分からないでいた。



そこから私達はただ黙って、学校ミックスのポジション毎に別れた練習を見ていた。


ポジション毎の練習。

私は工藤くんを
むっちゃんと紗香はふっちーを見ている。


時折こちらに向けられる二人の視線の先に

誰がいるのかを考え……


ずっとずっと…胸が痛かった。