工藤くんと体育館の入り口で別れると、みんなの待つギャラリーへと上り、合流した。


何だか胸がいっぱいであまり食べられなかったけど


さっちゃんが

「大丈夫?」

そう聞いてくれたのに頷く。



「後で……また、話す事になった」

「え!良かったじゃない!」


むっちゃんも喜んでくれたけれど


紗香はこちらを見ずに、焦点の合わない目をしていた。


それをさっちゃんが心配そうに見ていた。



誰かを好きになると……

不安から疑心暗鬼になって


報告のタイミングを間違うと、むっちゃんとちぃこちゃんみたいになって


同じ人を好きになると、むっちゃんとちぃこちゃんと、紗香みたいになって


自分の好きな人が友達を好きになると……紗香とB子みたいになって……



私と紗香は……

どうなるんだろう。


工藤くんの事は

紗香には、言えなかった。

言いたくなかったのかもしれない。


紗香は私に話してくれていたのに。

やっぱり、気分は良くないよね。


それに、自分の事を好きな男子が、私の好きな人だっただなんて

紗香にしても、気まずいよね。



ふっちーと私の事を誤解してたとしても……


ふっちーも紗香に気があるなんて、むっちゃんの手前言えないし


いや、むっちゃんがいなくても……

ふっちーの気持ちを私が勝手に紗香に話すのは間違えてる。



どうしたら、いいのかな……


昼食を終え、さっちゃんとセイがフロアへと下りると


私と紗香とむっちゃんが残る。

それと、気まずい雰囲気。



休憩時間を終えるブザーが鳴り、私達も沈黙のまま、コートへと視線を移した。



ふっちーがコートからニッと笑う。

さっき、私と工藤くんを二人にしたことに対してからかっているのだど、私には分かる。


だけど、その様子が紗香にはどう写ってるのか気になって仕方が無かった。


反対側のハーフコートで、K高も練習を始める。


遠目に目が合ったように感じる工藤くんは……

私じゃなく、紗香を見たのだろう。


そう思うと、胸が痛い。

この痛みを紗香も今、感じたのだとしたら


私はやっぱり、何とかして紗香に説明したいと思った。


どう説明するか頭の中を整理する。

ふっちーの気持ちを紗香に悟られないように話すにはどうしたらいいのだろう……。



「ねぇ」


口を開いたのは私ではなく、紗香だった。