紗香の表情から、このシチュエーションが宜しくないのも……

誤解されてるってむっちゃんに言われてきたことも思い出して


それに、彼と紗香の並んでいる姿を見るのも…キツくて、私は直ぐ様俯いた。



「それ、俺の靴じゃねぇ?」

彼がふっちーの足元を指差し

「お前のこっち」
そう言って自分の今履いてる靴を指した。

彼の指差したふっちーの靴は……


白に赤の……

スタンスミス。




「あ!本当だ、悪い。俺も同じの持ってて、今日はそっち履いてたんだった」

「何だぁ?ヘバッてんの?」

「はぁ?まだ動くっつの!」



そう言って、二人はその場で靴を交換し


私達から離れ、二人でコンビニへと向かって言った。



「赤の……スタンスミス……」

紗香が何かを思い出すようにポツリと溢す。


それに、私は観念したように顔を上げた。



紗香の目が見開かれ


後ろにいた、むっちゃんとさっちゃんをバッと音がするくらい振り返った。



むっちゃんとさっちゃんの顔に
紗香が私に向き直り


「……みんな、知ってたんだ。私だけ、知らなかったの?」

呆然としながら、紗香がそう言って


私は……
「ごめん」
としか、言えなかった。



「今日、言うつもりだったんだよ、ねぇ?朱里」
むっちゃんがそうフォローしてくれたけど


そこから紗香は俯いて、何も言わなくなった。


セイが意味も分からずキョロキョロして


「とりあえず、コンビニ行かない?」


そう言って、漸く私達は動く事が出来た。




私は紗香の隣に並ぶと

紗香の顔を覗き込んで


「……ごめん。言えなくて」

「……私は、朱里には何でも話して来たよ」


紗香は目を合わす事なくそう言った。



コンビニには、ふっちーに、彼、他のバスケ部



私達は微妙な空気のまま、コンビニに入った。



ドリンクのペットボトルが並んだら冷蔵庫の前


白のスタンスミスが目に入り、顔を上げられなくなった。



「あ、ごめん。俺、邪魔?」

そう聞こえて、ゆっくり顔を上げた。


「いえ」



この人はこうやって、認識が無くても…声を掛けてくれるんだ。


冷蔵庫のドアを開けてくれる彼の方は向かず急いで紅茶のペットボトルを手に取ると

一礼してレジへと急いだ。



覚えてる訳無かった。


それなのに……


虚しさを覚える。

レジを待つ私の後ろに彼が並ぶ。


背中が緊張する。



支払いが終わって、コンビニの外へ出ると一息ついた。



はぁ、とても、無理。


話すとか。



コンとペットボトルの底で頭を突つかれ、振り返る。