午前の練習が半分終わった頃、さっちゃんとセイがギャラリーに上がってきた。


「女バスは先に休憩」


バスケのルールを知ってる二人が男バスのゲームを見ながら、説明してくれる。


「K高の17番の子、上手いね」

「あー、オフェンスがね。ほら、花形。あ、ミスマッチ!上手い!」

「ナイスアシスタント」


17番……あの人…だ。


「2、3年では結構いるけど、1年じゃ、うちのふっちーか、向こうの17番だね」


「3年だと、K高の5番ヤバい」

「うん、多分F大のセレクションだって」

「……マジ?」

「いくつか話が来てるって聞いた。うちのキャプテンも。こっちは実業団だけど…でもキャプテンは進学希望」

「あの人、堅実だから……」


さっちゃんとセイが内輪の話をしてる間も
私は17番のプレーをずっと見ていた。



バスケの上手い下手がよく分からない私ですら、彼が……上手いって言われるのは、分かる。


「すごっ!こんな上手かったんだ」

紗香がその17番を見ながら言った。


「今まで、こっちの11番しか見てないからでしょ?」

さっちゃんにそう言われ
紗香が

「さっちゃん!声!」

聞こえる訳もない音域のさっちゃんにそう注意をしている。


「でも本当、格好いい人だね」
むっちゃんが伺うように、紗香にそう言う。



「うーん、そうだね」

「モテてたりして?」

「そりゃモテるでしょ。顔もいいしね……あと、人なつっこいしな」

「へぇ、そりゃモテるね、モテない訳ないね」

「うん、モテてる、モテてる。……だけど、好きな子がいるみたいだよ」

紗香がそう言った。


ズキンと痛む胸に、私は二人の会話を聞いてない振りをした。


「好きな人?彼女じゃなくて?」

「そ、アイツ…結構オープンだから」

紗香は、ふっちーを目で追いかけるのに忙しいらしく

そこからは口をつぐんだ。



オープン……
じゃあ、クラスでは紗香を好きな事を公言してるのかな。


そうおもうとどうしようもなく胸が痛んで、顔をしかめた。


「紗香はさぁ、もしふっちーに好きな人がいたらどうする?」


「どうもしないよ。どのみち、どうも出来てないんだから……」


「確かに!」
むっちゃんがビンゴ!とばかりにそう言うと
自覚している紗香がジロリとむっちゃんを睨み


「もう!分かってる!けど、どうにかしたいと思ってるし……それに……好きな人がいるとか、誰が好きとかは……本人に聞くのが一番。最近、そう思ったんだよね」


紗香はあれからもB子や他のクラスメイトと何かあったのだろうか。