結局、微妙な空気のまま

土曜日になった。


休日に制服に着替え、お昼ご飯を持って体育館へ。

バスケ部でもないのにアップ時間に間に合うスタンバイ……。


「よう!早いな、お前」

「本当、早く来すぎちゃった」

「何あれ、むっちゃんと石橋まで仲いいわけ?」

あんたを好きで好き友だわ。

なんて言える訳もなく…


「そ、話しやすいからね紗香もむっちゃんも」

「へぇ。ま、今日はほぼゲームだし見てんのも楽しいんじゃねぇ?」


「あ!そっか、もっとルール知るのにSL○M DUNK読んでおけば良かった!」


「バッカ!ルール知らねぇのかよ。何で見に来てんだよ」


「だいたい知ってる、細かいとこがちょっと…ほら、ね?」

好きな人がいるから見てるとか
本人には言えないし、言ったとしても私から言うのは違うし……



「んなら、SL○M DUNKの時からルール変わってっし!」


「え…そうなの?」


「あー…説明してやろうか?」


「いーよ、月バス読むから」


「ルール載ってねぇわ!あ、アイツに貸したからな。今日持って来るって言ってたけど…忘れてたらラッキーだな」



「は?何でラッキー」


「個人的に、返して貰えるじゃん!」


そうか、ハンカチも……

って…

「いや、いいから!もう!」


そう言い合いしていると


「おはよー」

「うぃース、むっちゃんも熱心だねぇ」

ふっちーがむっちゃんにそう言った。


この鈍い男!!


「そうだよ」
むっちゃんはニコリともせずに上に上がって行った。



微妙な空気に気まずいのは、私と紗香だけでもなかったらしい。



「あ、じゃね!頑張って!」
ふっちーにそう言って、むっちゃんの後を追いかけた。



「むっちゃん!」

私がむっちゃんに追い付くと

むっちゃんがため息をついて


「ごめん」と言った。

「……え?」

「今の感じ悪かったかなって」

「え、いや…」

「昨日の帰りのふっちーとのやり取りもさ、朱里は何とも思ってないだろうけど…もやもやしちゃって。ごめん」


…昨日…

あ!


「違うの!昨日ね、ふっちーに貸してた月バス…ふっちーが“彼”に貸したの。それで…そのやり取りをしてたんだけど、紗香もいたから…さ…今もその会話してて…」

私がそう説明すると

むっちゃんはきょとんとした目を向けた
小さくため息をついた。