「ふっちー、誰が好きなの?」

さっちゃんがもっすご、ストレートに聞いたもんで、私もガバッと起き上がってふっちーの方を向いた。


「…いや、言わねぇよ?」

「だよね」

「…お前は?」



「……私は……諦めてる最中だから、そっとしといて」



そう言うと、憂鬱な理由を思い出して

もうずっと、そうしていたいように

机に突っ伏した。



やがて静かになった教室に、先生がテストの解説を始めた。




頭を優しくつつかれて、顔を上げた。


「終わったよ、授業」
さっちゃんがそう言って、私の前に座ると



「どうしたのよ?“諦めてる最中”?」


「昨日、あの人…いたの。バスケ部」


「嘘!良かったじゃない!!」


「紗香と喋ってた」


「紗香の知り合い!?じゃあ……」


「紗香の“隣の席”なんだって……」


私がそう言うと

さっちゃんが少し考え…状況を把握したのか

固まった。


「A……?」

「そうなんだろうね」

「そんな事…ある?」

「あるんだろうね」

「紗香には?」

「言ってない。言えなかった」


「B子パターンだね。それがツラくて私達に癒しを求めて来た紗香にも…酷だよね…」


「何で、紗香なんだろ…」


「可愛いしな」


「分かってるって!」

自分でも口調が強くなってしまって、慌ててた。



「紗香が悪いんじゃないよ」

さっちゃんはそう言った。


私もそう思う。


「うん、分かってるよ。だけど…紗香を見るのがツラいって言うか…まぁ、今日も会うんだけどさ。どころか、あの彼にも……あの彼には会うっていうか、見るだけだけどさ」


「ツラいなら、今日は止めとく?」


「紗香に、むっちゃんを紹介してって言われてるの。お互い、その…存在は知ってるでしょ?ギャラリーで並んで見るかもしれないし…」


「大混線」

そう言ってさっちゃんが、白目のジェスチャー。


「ライバル宣言でもするのかな?」
冗談で言ったけど…


「潔くていいかもね。恨みっこなし!てかさ、これでふっちーが好きなのが朱里だったら相当……混線するね」


「ない!それは、ない!さっちゃん面白がってるでしょ!?」


「ない!それは、ない!」


私の疑いの眼差しに



「いや、でもちょっと楽しそうだなって…ほら、恋愛の醍醐味?ライバルの存在が余計盛り上げるってやつ!」



「“誰かの彼氏”になった時、みんなどうするんだろうね」


私がそう言うと、さっちゃんも眉を下げた。


「紗香ならいいなぁって思ってたんだけどね、そうも思えなくなったなぁ」


さっちゃんがそう言った。