恋の威力って凄い。


頭で冷静に、考えたら

ただの、失恋だ。


それなのに…
全くやる気が出ない。全部を失恋が持って行った。


立ち上がって、制服に着替えるのさえおっくうな程に、体が重かった。


誰とも喋りたくない。


何も食べたくない。



無気力だ。


失恋って凄いな。


昨日までは、楽しかったのにな。



はぁーーーっとため息を吐いて学校へと向かった。





「おはよう、朱里」


「おはよう、さっちゃん」


「昨日、練習見てた?」


「うん、下の小窓から…」


「マジ!おっかしい!おかしいからっ!」

机をバンバン叩いてさっちゃんが爆笑してる。



「……あれ、朱里…どうしたの?」

「さ、さっちゃあん!!」


さっちゃんに、泣きつこうとしたその時に



「さー、席に着けよー」

そういえば担任が教室へ入ってきた。


「どうせ、テストの解説だし、話聞くから」

そう言ったさっちゃんに


「うん」

とだけ言って、机に突っ伏した。




返ってきたテストもイマイチだし


…赤点じゃないだけマシか。




顔を左向けて突っ伏した私は

顔を右向けて机に突っ伏したふっちーとそのまま目があった。



「何、テスト悪かったの?」

「良くはねぇ。お前は?」

「私も…」


そんな姿勢で話す私たちにさっちゃんが
怪訝な目。


「何、あんた達。目に見えて落ち込んでるじゃん」



……そうなのよね

もう、そうなのよ。


学校に来て良かった。

家に一人だったら、悲惨だった。



ん?

目に見えて落ち込んでる?


ふっちーも?



「ふっちーはどうしたの?テスト結果だけならそんなに落ち込まないでしょ?」

「お前もな」



ふっちーが、突っ伏したまま、私の方へ向けた顔だけを少し上げて、自分の腕に顎を乗っけた。



「……色々…何か、まだまだだなって…思ったり。思うように行かなかったり……」

ボソッとそう言った。



「……バスケ?」さっちゃんがそう聞いて

「……恋愛?」私がそう聞いた。



それにふっちーが

「どっちも」


と、大きなため息の後でそう言った。



「モテるのも大変だね」


「誰が」


「ふっちーが」


「好きでモテてんじゃねー」


「言ってみたいもんだね」

「本当にね」


私たちがそう言うと


ふっちーがガバッと起き上がって


「あのなぁ、自分が好きな奴に……」


「渕上、何だぁ?」先生に注意され


「いや、好きな教科だったのに、点数があれだなーって…」


「おー、期末頑張れー」


「はい」



ふっちーは声のトーンを最小にして


「自分の好きな奴に、モテなきゃ意味ない」

そう言った。