「ふっちーの学ラン見たい」

「ああ、写真撮ってこようか?」

「ちょっと、朱里がふっちーの事好きだと思われたらどうすんのよ!それどころか、朱里が私に頼まれて撮ったと思われたらどうしてくれるのよー。」

手っ取り早く気持ちが伝わっていいんじゃないの?

そう思ったけど、黙っていた。

そもそもが考え過ぎだ。

「生!生が見たいのよ、生ふっちーの学ランがぁ!」

紗香は正座したまま、ボスッとクッションに顔を埋めてそう言う。

ちょっとこの姿をふっちーに見せてやりたいものだ。

紗香は明るい性格で、すぐに誰とでも打ち解けるタイプの子だ。

顔も可愛いし、オシャレだし…

あまのじゃくさえなければ…とっくにふっちーの彼女になってたんじゃなちかなと、私は思っている。

「告っちゃえ」

ボソッと私がそう言うと

クッションに、埋まったままビクリとした。

「告っちゃえ」

今度はハッキリそう言うと、ガバッと顔を上げた。

「し、死ぬぅ……」

「じゃあ、誰かに先越されて、ふっちーに彼女が出来たらどーすんの?」

「な、泣くぅ……」

告った方がダメージがデカイじゃないか。

「誰かに取られるくらないなら…」

紗香がそう言うとヘアピンを手に取った。

「いや、それに殺傷能力ない。先は安全に丸くされてる」

紗香がふるふると笑い出した。

それにつられて私も笑う。

下らない時間。

お菓子食べて、しゃべって

テストやばーいなんて言いながらまたしゃべる。

一通り笑い転げた後に

「ふっちーの学ラン見に行くツアー!」

紗香がそう言って立ち上がった。

「ツアーって何だよ、一人で行きなさい」

「えぇ、ちょっとムリムリ、ついてきてよ。N校に忍び込むのに一人なんて」

……忍び…込む?

「え、登下校狙おうよ、学ランだよ?で、ごめん。学ラン脱いでるよ、5月だし。」

「……じゃあ、学ランじゃなくてもいい!もう、ふっちーが見たいのよぅー」

正直、他校に忍び込む勇気があるなら

告る勇気の方が…

「朱里、制服貸してえ!」

「良いけど、制服貸しちゃえば、私は校内に入れないよ?」

「……本当だ!どうしよう!?」

「だから、そんなまどろっこしい事しなくて…」

「さっちゃん!!」

紗香はそう言うと、スマホを取り出し、同じく同中からN高へと行った沙知代へ、助けを求めた。

どうやら、忍び込むのは決定らしい。

どんだけ見たいんだよ。

「告れよ、もう」

「……」

「聞こえないフリするなー」

「……顔見たら、もう好きじゃないと思うかもしんないし…」

「じゃ、顔見て好きだと思ったら告るのね?それなら、貸しますよ、このセーラー服!」

真っ赤になった紗香にそう言った。

全く、恋は意味不明だ。