「なーんか、色々複雑に、なってきたね」

「本当。ややこしいお年頃」

「高校生になったら…」

「制服デートももっと…」

「私の彼氏は私服」

さっちゃんが自虐的に言った。


「いや、さっちゃんなんて悩みないじゃん!」

「そうだよ!羨ましい!!」



「あるよ」


さっちゃんの顔が少し曇る、と言うことは…


「待ってました!さっちゃんの恋バナ!」

紗香と、二人でさっちゃんの方へ乗り出した。


「あのねぇ、悩みだって言ってるのに、あんたらは…」
さっちゃんは私達を睨むと話し出した。


「なるべく早く受験終わらせたい。ってことは推薦を視野に入れてるのよ、そうなると内申も大事で…勿論、バスケは大好きだし、やりたいと思ってたし、…そのお陰で…彼とも出会えたし…」

乙女になりながら話すさっちゃんに紗香がストップを入れた。


「さっちゃん、写真見せて」

「え、い、そ、いいのないんだけど、これ、私変な顔だし!」

なんて良いながらさっちゃんがスマホを、差し出した。


「嘘!やだ!格好いい!こんなOBいたんだ!名前は!?」


(かえで)

「キタ!中性的な名前!イケメンネーム!キタコレ!」

「あ、さっちゃん気にせずに続けて」

テンションの上がった紗香を無視して、さっちゃんに、そう言った。



「部活帰りとなると時間も遅いでしょ?同じ大学行きたくて受験の為に高校生生活を頑張ると、彼と会える時間が減って…大学生って、高校生と、違って時間に余裕があるみたいで……不安」


「……そっかぁ」


「大学行くまでに心変わりしちゃったらって…だって、大学生のワンレンにボディコンにピンヒールの大人の女に私が勝てるわけないし……」


どうやら、恋は人をおかしくさせる。

それはクールなさっちゃんも例外ではないらひい。


「さっちゃん…」

古いよ…そう言おうとすると


「確かに、さっちゃんボーイッシュだもんね。だけど、あれだよ?普段ブルーのアイシャドウとかこってり赤口紅の年増に対抗する必要はないよ!」

そう言って、紗香のバイブルを取り出した。




【あの綺麗な人が好きなんじゃないの?】

【俺は、素っぴんのお前が好きだよ…】


なんてセリフを抜粋すると


「ほら!これだよ、これ!さっちゃんを選ぶということは、こんなタイプの男の人なんだよ!」


傍観しようと思ったけど、口を出した。



「ねぇ、いつの時代の大学生なの?バブル?」



キョトンとした二人の“大学生”イメージを崩すのに


ファッション系アプリを開いた。



二人がそれを熱心に覗きこんだ。