「好きな子がいない時期の方が少なくないもんじゃないの?大体、常に誰かが恋バナしてるよ?」

さっちゃんがそう言って、私はいくらかホッとした。

「ふっちー、モテてるよ」私がそう言うと

「知ってるよ」紗香がそう言う

…知ってるのか…

「だって、あんなに格好いいんだよ?モテるよね、そりゃ」

「ああ、それで朱里が他クラスに呼び出されてたよね?」

さっちゃんがそう言った。

「え、呼び出されたの?」

朱里の言葉に

どうやら、こっちは…話さないとダメなようだ。

私はため息を吐くと、この前の紗香と同じように

トレーの下に敷かれてた紙を裏返すと、紙に登場人物を書き始めた。



「えっと、まずA子がいて……」

「ややこしいわっ!」

紗香の声が店内に響いた。



とりあえず、何とか説明を終えて

斉藤さんには申し訳ないけれど、そのあたりの説明もした。



「やっぱり…朱里がまわりに与える脅威!」

「え、そこ!?」

「朱里と同じ学校だったら、分かってても気になったかもなぁ……」

「でも、席替えしたらそこまでしゃべんないよ?」

「そうかなぁ。いや、斉藤さんの気持ちも分かる。ちぃこも……」

こちらは、イニシャルトークですら無くなって実名だ。


「ね、朱里。私の事、斉藤さんには言ってもいいよ」

「え、うん、いいの?」

正直、もう斉藤さんとガッツリ話す機会があるかどうか分からないけれど……


「だって、こんな風に話されて、フェアじゃないよね、だから、話して、むしろ、話して!」

「紗香って男前!」

「変な奴だけど!」


「変な奴だけど、可愛いって言ってくれた!んだよね?」

「そうそう」

「そんな認識でも嬉しい。それに、やっぱり…朱里がいて良かったよ、それで諦める女子もいるかもしれない」


「仲良い女子がいるだけで諦めるの?」

「まぁ、本気で好きではないんだろうけど、朱里って何か脅威だよね」

「あー、何気にモテるタイプだよね」

「そうなのよ、メチャメチャモテるわけじゃないのに、この人!ってのは朱里が持ってく…」

「何よ、それ」

「分からなければ宜しい」



よく分からないのでスルーすることにした。


「あ!ふっちーカップケーキは知ってる奴からしか受け取らないんだって」


「…ふっちーと何の話をしてんのよ」
紗香は目を細めて、不服そうな顔をしたけれど

この前のふっちーメモにこの情報を付け加え
た。


「甘い物より飴はレモン、お弁当には梅干し。」


紗香に知ってる情報を伝えた。


「梅干し入ってんの?」

「うん、毎日…」



「朱里にお願いがあるんだけど……」

「何?」

「梅干しの種、貰って来……」




「絶対に嫌ー!!!」

今度は私の声が店内に響いた。