「違うの、本当に、応援したいなって思ってて」

斉藤さんは席に着くなり言い訳から始めた。


「ねぇ、斉藤さん。私に言い訳されても…」


「……そうだね。でも、ちぃこが格好いい!って最初に言い始めて、皆で応援しよーってなったのに……ちぃこの為に渕上くんを探してたら、いつの間にか…」

「あー、何となく分かるような、これがアイドルか何かだったら、一緒に応援しよーで済んだのにね」

「ちぃこが、気づいてるっぽくて……」

「もしかして、それを誤魔化す為に……」

「ごめん!必死だったの!ああやって、今西さんの事に私が介入したら、ちぃこも疑わないんじゃないかなって……」

「大事、なんだね。ちぃこちゃんが」


「……違うの、自分の為かもしれない。だって、本当に、今西さんて渕上くんと仲いいし、“ふっちー”って呼ぶのも羨ましくて、ああ、もう、何言ってるんだろ…」



うっわー

思いっきり、好きじゃん?

もう、完璧にふっちーの事好きじゃん?


「もうさ、言っちゃえばいいんじゃないの?ちぃこちゃんに」


「高校生活始まって、新しい友達が出来てホッとしたんだよ。グループが出来ちゃってさ。それで嫌われて、一人になっちゃったら……」


「うわ、それはそうだね。でも……それで気まずくなるのは仕方がないよね。そんな友達って…」

「分かるよ、本当と友達じゃないかもしれないけど、高校生活、ぼっちはツラい!始まったばかりなのに、クラスでハミるとか」


「……どうする?あのグループのそうしやすそうな子とかいないの?」


「……みんなで応援モードだったから…」


「あ、じゃあ、万が一、…ふっちーが斉藤さんの事好きだったらどうすんの?ちぃこちゃんの為に振るの?ちぃこちゃんは振られてるのに?」


「…っ!……つ、付き合いたい。でも、そんなこと、ないと……思うけど。きっと、あり得ないけど…」


「…正論というか、やっぱり…正々堂々とって意味では…ちぃこちゃんに言うべきだと思うな、私は…」


「私もそう思ってる。だけど…怖い」

斉藤さんの気持ちは痛いほど分かる。


まだ5月だ。

高校生活は始まったばかり。

出来上がったばかりの人間関係、しかも女子のグループ……


この1年が楽しいか楽しくないかなんて

人間関係にかかっている。



しかも、ちぃこちゃんが失恋したタイミングでのカミングアウトは……


あまり宜しくないのかも、しれない。



「少し、勇気をチャージして、中間に挑むね」


「そうだね」


何はともあれ、中間テストが先決だ。