「ふふ、そうだね」
彼女は、昼休みに会った時ほど感じが悪くなかった。
「ごめん、名前聞いてもいい?」
「あ、斉藤睦美デス」
「斉藤さん…思ったより話しやすいね」
「…ごめん、昼休み何か頭に血が上っちゃって…考えたらおかしくよね。今西さんが渕上くんを好きでも…何も悪くないのに」
「…いや、だから好きじゃないってば」
「あの場面では、言いにくいよね、何かずるかった」
「いやいや、だから、本当にその恋愛っていみでは好きじゃないんだってば」
「“まわりにも渕上くんを好きな子がいる”って、協力出来ない言い訳だよね?」
………
何でそうなる。
だけど、紗香の事を説明するのもおかしいし、人のこと、勝手に話しちゃダメだよね。
「あのねぇ、だから、私は……」
……あれ?
ふと、もしかして…そう思った事を口に出した。
「斉藤さん、ふっちーの事好きなの?」
それまでもゆっくりだった斉藤さんの歩みが止まった事で
それが“当たり”だったのだと……
それから、斉藤さんの顔から
可哀想な事をしたかと思うほど…
「ご、ごめん!図星だったんだね」
校内で言ってしまったことを謝った。
「え、あ、違うの!そんなの、違うの!ちぃこが先に好きになったんだし、本当に二人がうまく行けばいいなって思ってたし、ちぃこが振られたからって、私はどうこうしようなんて思ってないし!だいたい私は今なら引き返せるって分かってる!」
必死にそう言った斉藤さんが、そこまで言うとおり固まり…
私が
「そうだね」って微笑むと
みるみる眉を下げた。
そして…
「私が一番…ずるいんだ」
そう言った。
恋って、滑稽。
それに、楽しいだけのものじゃないんだなって
斉藤さんを見て思った。
体育館から響くドリブルの音。
楽しそうな話し声。
おもいっきり“青春”って感じの部活生の横を通りすぎ
「お茶でも行く?」
校門を出た頃にはそう言っていた。
「いいの?」
斉藤さんが小さな声でそう言った。
斉藤さんも誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
あのグループ内では言えなくなった、ふっちーへの恋心を。
あそこと無関係の私にしか言えない、胸の内を。
それにしても、モテるなぁ、ふっちー。
紗香を応援している私としては…かなり複雑だ。
昔から知ってる紗香が有利なのか
同高のちぃこさんと斉藤さんが有利なのか…