「ねぇ、ふっちー、元気?」
何度このセリフを聞いただろうか。

小学校、中学校と同じ学校で同級生だった石橋(いしはし)紗香(さやか)は制服のまま、今日も私の部屋にやって来た。


家が近所なのもあるけど、私と紗香は仲が良かった。


「そうしょっちゅう聞くなら、同じ高校行けば良かったんでしょ!?」

呆れるように私は紗香にそう言った。
このセリフだって、もう何回言っただろうか。

「だってさ、追いかけたと思われたら嫌だし」



紗香は中学の時からふっちーこと、渕上(ふちがみ)雅紀《まさき》に片思い継続中だ。


私達は中学まで、同じ学校に通っていた。


高校からは私と渕上くんはN高、紗香はK高だ。


紗香はなぜかふっちーの前になると

見事なまでのあまのじゃくに変身し、同じ高校を受験しなかった。


あの時、ふっちーが
『石橋も同じ高校受けるんだろ?』
なんて、聞いたもんで

『は!?何であんたと同じとこ受けるのよ、ち、違うから!』

何て事になって…



「ああ、約束しなくても会える日々よカムバーック」

そう言ってジメジメと湿っていた。



「まあ、いいじゃん。K高制服可愛いし!」




モスグリーンとグレーのチェックの可愛いプリーツのスカート、ブレザーにボウタイ。


紗香の制服は、どこかのアイドルグループが着てるような制服だ。


「そうかなぁ?N校のセーラー服の方が男子ウケいいよ、何かやらしーって」


「…え…」

確かに、グラビアアイドルが撮影用に着そうではある。

でもヤだな、それ。


「男子の頭ん中なんてそんなんだよ、きっと」


「へぇ、ふっちーもかな。聞いてみよ」

「ちょ、違う、ふっちーは違うから!」

「あはは!冗談だって、そこは考えたくないね。K校は男子も制服格好いい!」


男子は同じブレザーに同じチェックのパンツ。斜めストライプのネクタイには小さく校章が入ってる。


「え!?そうかなぁ。男女ほぼ一緒だしなぁ。それより、N校の学ラン!!絶対ボタン欲しい」




私達の高校は
男子は学ラン、女子はネイビーにワインレッドのラインの入ったセーラー服だ。

「発想が古い!てか、入学したとこだし!」


高校入学して少し馴染んだ…5月の事だった。