「ひどい」

「本当、ひどいよね」

「やっと学校生活に慣れたっていうのに、もう中間テストだなんて」

「稚児がそら寝をしたばっかりに!」

「品詞分解による、瀕死!」

「あ、それちょっと上手い」

「でも、訳は下手くそ」

さっちゃんが、紗香のノートを除き混んでそう言った。


「さっちゃんは頭もいいからなぁ」

「だって、私T大目指してるからね」



「「T!?」」

「何で!?」


「彼氏がT大」

「…………」

「…………」


「猛勉強しても、間に合わない。部活とか…で内申稼ぐかぁ。ああ、でも受験方式変わるしな、ポートフォリオとか…自己プロデュースという面では…」


「ええ!?」


「え、知らないの?変わるよ、受験」


「さっちゃん、彼氏、いるのー!?」


「え、そっち?一テンポ遅れてるよ!」


「遅れてない!さっちゃんが先に進んだんじゃん!」紗香がつっこんで


「受験より、彼バナ!!」私も加勢した。


「い、い、いづれの御時にか!」
(※訳いつの間に!?)


「古文を引用すな!今の御時だ!」


「誰、誰、誰!?ふっちー!?」
紗香はまだおかしい。


「いや、ここで私がふっちーと付き合ってたらおかしい。そもそもふっちーはT大生ではない」


「……何でそんなT大生!?」


「最近。ごく最近なんだけどね。付き合ったのは……」

言葉をひとつひとつ口から出す度に

さっちゃんの、顔が乙女に変わっていく。



「中学のバスケ部OBなの。たまに練習顔出してくれててさ…」


「…告白…」


「したの」


「さ、さっちゃんが!?」


「うん」


「し、師匠!!」

この瞬間を境に、さっちゃんのあだ名が
師匠に変わった。


「それで?」

「中学生と高3でしょ?振られちゃって…でもめげずにもう一度告ったらOKしてくれたの」

「さすが、さっちゃん。オフェンス、得意だもんね」

「そう、ディフェンスがいつも足が動いてないって…コーチに怒られ…」

「うん、で?」

「最近付き合い初めて…」


「うん、で?」

「いや、だから…T大目指してんの。って話!合格したらね……1年だけ、一緒に同じ大学通えるの」


今日一番乙女な顔で……

さっちゃんがそう言った。


「そっか、3つ上ってそっか!!」

「いい、それ、同じ大学とか!!」



「「campus life」」


紗香と声が揃った。