他校生

「ちょっと、ぎゅっってしてもらえませんか?」


「何それ、可愛い」



公園の静かなベンチ。

結局走らされて、これが校庭なら多分先頭の快晴くんとは3周遅れくらいじゃないだろうか。





快晴くんが、私の好きな紅茶のペットボトルを渡してくれる。


上がりきった息が漸く整って


ブレザーを脱いだ快晴くんが、また少し逞しくなった気がして


つい、言ってしまった。


「筋肉ついたね」

「お、チェック厳しいね」


「カッコいい」

「……はい、じゃあもう一回、ぎゅってしてあげようね」



ぎゅっとしてもらうのが終ると


快晴くんが私のペットボトルから一口飲んだ。


このぎゅってした後の沈黙が一番恥ずかしい。

どうしていいか分からなくて。


快晴くんの優しいキスは仄かに紅茶の香り。



私達は、ゆっくり


……ゆっくり。









街は色んな制服が交じる。


どこか知らないその制服は

妙にカッコ良く見えたりして。



同じ高校生だってことは、制服から分かる。



意識をしながらすれ違う



自分たちは着ることがない、そんな制服に憧れた。



あっちの世界は特別素敵に見えた。

自分たちより“青春”してるように見えた。



制服マジック

同じ高校より2割り増しで…

カッコ良く見えた。



すれ違うだけの、“他校生”は。







やっぱり、快晴くんは……

背が高いこともあるけど、カッコ良くて目立つ。


知らない人ならきっと、随分と大人に見えただろう。





見上げると、微笑む。


人懐っこい笑顔で。




等身大の、高校生。


私達はゆっくりゆっくり進む。


出会ったあの日から。




“他高生”


私にとっても、快晴くんにとっても。


同じ教室でも、行事も
一緒には過ごせないけれど……




今は
遠い存在では無くなった。




だいたい、快晴くんはさ


学ランより、ブレザーが似合うんだもん。



だから……


他校生で……良かった。



毎日会えないけれど、会えなくても……
会いたい気持ちがお互いにあるって知っているから。