「あ、そうだ、これ」


快晴くんから渡されたのは

あの日のハンカチ。


「遅いよ!」

そう言ったけれど……


これを返してくるということは
快晴くんも、私達の関係はもう
“大丈夫”だと、やっと思えたんだろうなと思う。



「あと、これも」

そう言って、渡されたのは新しいハンカチ。


「可愛い!ありがとう!」

タオル地にシルバーの刺繍“A”


「探したけど、無かったんだよな、そのブランド」


………無いだろうね。
快晴くんの行くような店には。


「これね、おばあちゃんのなの」

「……えぇー……」

「あはは!」

「何だよー」



「はい、これ」

私も用意してたのを渡した。


「あ、サンキュー」


スポーツタオルだ。
快晴くん、ハンカチ持たないし。



「快晴くん、汗かきだからね。冬でもボトボト……」

「いや、バスケしたら汗かくから。俺そんな汗かきじゃねぇから。ほら、毛穴少な目」


確かに、快晴くんはお肌つるつるだ。


「うん、つるつるだよね。汗かきだから肌綺麗なのかな?」

「汗かきじゃねぇ!」

「気にしてる、気にしてる。色白だしね」

「外連もあるんだけどなぁ。焼けない。つか、室内競技はだいたい白い奴多い。外の部活の奴は10月くらいから、白くなってくるぞ」


「あ、確かにね夏はヤバいくらい黒くなってるね」

「そ、外部はあちこちのかさぶたも痛々しい」

「室内はケガしないの?」

「膝とか足首とか、手とか痛めるのはあるなぁ。後は打撲の青タン。でもバスケは接触するから、相手の肘とか当たったら瞼とか簡単に切れる。でこに歯形付いた奴もいる」


「嫌だ!痛いっ!」


「当たり負けしないように、鍛えます」


少しづつ、快晴くんは体が大きくなってきた気がする。


「また、カッコよくなるね」

「……そんなことを…言う?」


「ん?」

「渕上元気?」

「お、ライバル視ですか?」

「そうだよ」

「頑張ってるよ。熱狂的なファンがついてるからね」

「いや、マジでな」

「そそ、超ラブラブ」

「ふーん……」



「あ、本屋さん寄る?」

「今日はいっかな」

「じゃ、どうしよっか」


他愛もない会話。

私達は、ゆっくり、ゆっくり。




「ちょっとね、ぎゅっとしたいよね」

「あ、うん、どうぞどうぞ」



どちらもあんまり、上手くは言えないけれど。


私達は、ゆっくり、ゆっくり
進んでる。