『じゃあ、前に会った本屋の前で』

朱里ちゃんにそうメッセを送る。


やっぱり、同一人物だって、確信を持って。


あの日、うちの制服を着てた訳と

渕上と付き合ってるのかを聞こうと思ってた。


もし、“付き合ってない”って言ったら……


まだチャンスはある?


“友達から”とか、幼稚だけどそう言おうと決めてた。

何せ名前すら、知ったばっかりだ。





大きな公園のベンチの横に自転車を停めると

そこに二人で腰を下ろした。



「実は……紗香と制服取り替えっこしてたの。その時にたまたま……あ、傷は治った?」


K高の制服の謎はそう言うこと。

ハンカチの名前の謎は……デザイナー名!

考えたら、そうだよ。ハンカチにペンで書いてるわけじゃないし、そうだよ。バカか、俺。




本当は一番聞きたかった事……。

聞きたいのに、返事が怖くて躊躇う。



“渕上と付き合ってるのか”


「……彼女じゃない」

朱里ちゃんがそう言った。



じゃあ、“友達から”
用意してたセリフ。



でも、もう友達……とか可笑しい。
連絡先も知ってるし……



悩むのが、バカみたいだ。


会えなかった時間は無駄じゃなかった。

ちゃんと、育めてた。


全部が誤解で……

タイミングとか、期間とか……







「好き」


結局、それしか残らなかった。

朱里ちゃんが言ってくれた言葉が全てで


おんなじなんだからそれで良かった。


色々考えたって、不安なのも焦るのも


その、一言で済む。

その一言で賄える。




「俺も、好き」



好きだった。

もう既に。



色んな感情がごちゃ混ぜ。


でも、こんなに分かりやすく、この感情を表現出来るのは

この言葉だけだった。




これから知ってくお互いの情報は。


いつか、情報が、この感情に追い付くだろう。





繋いだ手に力を込めた。


あんなに探したけど



もう探さなくて、いい。


だけど、必死に探して、会えなくて……

会いたくて。

だから……



「好きに」

「なったのかも」

「しれない」

「し?」



ふわっと朱里ちゃんがあの時みたいに笑う。


可愛い名前!


可愛い顔!


こっちの制服も、似合ってる。



今日からは、俺の彼女。