呪われた旅館


思えば戸を壊す道具を探しに行ったきり姿を見ていない。

照「わかんねぇ......」
すみれ「私、電話してみる」
翔太「ソノ必要ハナイヨ」
すみれ「え?」
翔太「ドウセ、ミンナ死ヌンダカラ」

その声は間違いなく翔太から発せられたものだった。
だけど、何か様子がおかしい。

照「翔太、どうした?」
すみれ「しょー、た......?」

ベランダからこちらへゆっくりと歩いてくる翔太。
その雰囲気がいつもとあまりに違いすぎて思わず後ずさりしてしまう。
違和感の正体は、ふと視界に入った床の間の鏡に隠されていた。

目の前にいる翔太は無表情なのに、鏡に映っている翔太は苦しそうな表情をしている。
それを見て、この旅館の幽霊のことを思い出した。

“幽霊は、鏡には映んないんだって”