一歩進む度、着実に近づいてくるバックステージ。
まんべんなく客席に目を向けながらも、心の中では必死にその姿を探す。
__あ。
一目でその人だとわかった。
真っ黒な髪。胸元に掲げられた私のうちわ。
聞いていた通りだった。
だけど。
零「思ったより、普通の子だね」
零が耳打ちしてきて、周りからは歓声が上がる。
振り向くといつも通りアイドルスマイルを浮かべた零と目が合って、私も慌てて笑顔を作った。
零の言う通りだった。
犯人だって聞いていたから、もっと闇を抱えたような人だと思っていたのに。
私のうちわを持ってこちらに視線を向けるその人は、犯人というイメージとは程遠い、普通のファンの女の子だった。


