楽しい時間はあっという間に終わって帰り道。

秋華と冬斗くんを先に送って2人きりの車内。



「2人ともいい子だね」

「そうなんです、私の友達なのがもったいないくらい……」



口を開いてハッとした。

あ……また自虐しちゃった。


すると赤信号になって車が止まる。

春臣くんは私をじっと見て、それから顔を近づけてきた。

反射的にぐっと目をつぶると唇に落とされた触れるだけのキス。

え、なんでキスしてきたの!?



「そういうこと言うと今度からペナルティだから」

「やめてください、恋愛経験ほとんどないのにハードル高すぎます!」

「大丈夫、回数重ねたらハードル下がるよ」

「そういう問題じゃない……」

「はは、なんでそんなかわいいの?」



もう、今日は赤面しなくて大丈夫と思ったのに。

言いくるめられて悔しいけど、幸せそうな顔をされたら文句が言えない。



「そういえば、風夏っていい名前だよね。俺、好きだよ」

「赤面させようとするのやめてください……」

「ほんとのこと言っただけ」



なんの脈絡もなく褒めてくる春臣くん。

恥ずかしくて顔を覆っていた手の隙間からチラッと見たら、悪そうな顔をしていた。

うわ、確信犯だ!

そう思うのに、知らない表情が見られたことがちょっと嬉しかった。