その時、大きな破裂音と共に夜空が明るく照らされる。

花火が上がったんだ、ふと気が逸れて空を見上げる。

しかし、次に瞬きした時には暗く影っていた。

それから唇に覚えた感触。

いつの間にか至近距離にあった春臣くんの口元がゆっくり上がっていく。



「甘いね」



あれ、キス……された?

自覚したと同時にまた大きな花火の音が。

春臣くんの顔が鮮やかな光に照らされた。

それがあまりにも綺麗で直視できない。



「っ、りんご飴のせいです」

「照れてる?」

「そんなことして……周りに人いるのに見られたらどうするんですか」

「大丈夫、みんな花火に夢中だから」



確かに周りの人は誰もこっちを見てない。

だけど心臓は春臣くんに聞こえるんじゃないかってくらいバクバクしてる。



「誰も見てないしもっかいする?」

「もう……免疫ないから勘弁してください」

「はは、かわいい」



追い打ちでからかってきた春臣くんにギブアップ。

……まだ信じられない、この状況に。

いろいろ整理がつくまで時間がかかりそう。

だけどとりあえず、春臣くんのよく言うかわいいって言葉、信じてみようと思った。