でも、それは間違いだった。

私は春臣くんを信用できなかっただけ。

結果的に過去のしがらみから抜け出せず、春臣くんに迷惑をかけてしまった。



「風夏ちゃん」



優しく話しかけられたけど顔を上げられない。

だってどんな顔をすればいい？

勝手に落ち込んで勝手に泣いて、合わせる顔がないよ。



「風夏、こっち見て」



春臣くんの力のこもった声。それから頬に伸ばされる温かい手。

指先で涙を拭ってくれて、膝を曲げて私と視線を合わせる。

私は驚いて背筋を伸ばした。

春臣くんは今までの中で一番優しい顔で笑っていたから。