君がかわいいと言うから

「あの、大丈夫ですか?」



そーっと近づいて声をかけると、彼は驚いて勢いよく顔を上げた。

うっわ、イケメン。

ベンチのそばに街灯があるから、その人の顔がよく見えた。

大学生かな。ゆるくパーマのかかった暗めの茶髪に透き通った肌。

鼻は高くて目が大きい。

何より顔全体のパーツのバランスが完璧だった。

きっと道行く人に聞いたら、10人中10人がかっこいいって答えるくらい。



「あ、えっと……?」



私がどうして話しかけたのか分からないのか、その人は眉毛を八の字にして困惑している。

え、かわいい……子犬みたい。

落ち着いて私。初対面の人間にそんなこと言ったらドン引きされちゃう。



「すみません。大きなため息が聞こえて話しかけちゃいました。
大丈夫ですか?あ、余計なお世話だったらすみません」



そういうと、彼は私をじーっと見つめてきた。

どうしたらいいのかわかんなくてその状態で固まっていると、彼の目がだんだんと赤くなって、そして潤んできた。

嘘、泣きそう!?



「え!えぇっ!?大丈夫ですか!?
私にできることならしますから泣かないでください!」



思わず近寄ってポケットティッシュを差し出すと、彼は私の手首を弱々しく掴んだ。



「じゃあ……話、聞いてくれますか?」



近づいたその人からは少しお酒の匂いがした。

なるほど、やけ酒してこんなところで落ち込んでたのね。

とりあえず話を聞いてみよう。