「本番はもっと頑張るから」



春臣くんは私の手を握り返して微笑んだ。

ふわり、ひとひら桜の花びらが散って、春臣くんの肩に落ちる。



「これからも、俺と出会えてよかったって思えるように頑張るから」

「それ以上頑張らないでください」



舞い落ちた花弁を指先でつまんで渡す。



「春臣くんがありのままの私を好きだと言ってくれたように、私もありのままの春臣くんが好きです」



そう伝えて笑いかけたら春臣くんの顔が少し赤くなった気がした。



「これからはふたりで同じ道を歩いていきましょ」

「風夏ちゃんこそプロポーズみたい」



からかうような言葉。だけど幸せそうな笑顔だから、春臣くんも照れ隠しだって分かった。



「同じ道を歩くなら、ふたりで幸せになろう。
俺が望む未来に風夏ちゃんがいてくれること、もし叶うんだったらこの上ない幸せだ」



想いを伝える春臣くんの目はいつだってまっすぐだ。

初めて私に“かわいい”と言ってくれた日のことを思い出す。

あの言葉があったから、今の私がここにいる。



「もちろん、春臣くんが望むなら私は全力で応えます」



宣言した私を後押しするように、優しい風が吹いて桜が散る。

そんなたおやかな時間が流れる春の日。

私たちはお互いの想いを確かめ、未来を誓い合った。






END