「風夏ちゃん」

「ま、まだ何か!?もうお腹いっぱいです」



マンションに到着して車から出ようとすると、春臣くんに引き止められた。



「はは、胸がいっぱいじゃなくて?」

「とりあえずそんな感じなのでニュアンスで察してください」



久々にいっぱいいっぱいになって露骨に照れてしまった。

春臣くんは笑いながらダッシュボード下の収納から紙袋を取り出して、私の膝に乗せた。



「はい、これ」

「……ん?」

「今日ホワイトデーだから」

「あっ、そっか!」

「え、忘れてた?」

「私の中でアップルパイを持っていく日になってたので」



そうか、アップルパイを焼いて満足してたけど今日はホワイトデーだった。

ホワイトデーに男子からお返しを貰ったのは初めてだ。

なんだろうと思って紙袋を除くと、リボンのかかったハート型のジュエリーボックスが。



「……これは?」

「開けてみて」



恐る恐るリボンを解いてパカッと開けると、中に入っていたのはネックレス。

バレンタインのお返しにこんな高価そうなものもらっていいの!?

ちらっと紙袋を確認すると、私でも知ってる有名ブランドのものだった。



「こんな高価なものいただけません!」



テンパって返したら、それを受け取ってネックレスを取り出す春臣くん。

そして私のうなじに手を伸ばしてそっと触れた。



「付けてあげるから後ろ向いて」