「心外だな、そんなこと言われるなんて」



春臣くんは眉を上げて驚いた顔をする。

そして流し目で私を見て笑った。



「俺が風夏ちゃんを手放すと思う?」



自信に満ちあふれた表情を見て安心した。

この人は本当に私のことが好きなんだ。

分かってるけど、言葉にしてくれたらなおさら嬉しい。



「こんなにかわいくて努力家で、優しくて料理上手なのに?」

「そんな株を上げるようなこと言ったら調子乗ります」

「調子乗っていいよ。風夏ちゃんのすごいところはそれだけじゃない。
見るからに温厚そうで滅多に怒らないし、風夏ちゃんには悪いところが何ひとつない」



いつか秋華に言われたセリフ。

同じことを春臣くんに言われて、私のことよく見てくれる人に出逢えたと感じた。



「か、勘弁してください……」



でも恥ずかしくて素直にありがとうが言えない。

結局実家に着くまで褒め言葉の嵐は続いた。