「本当ですか、そしたらこれ、見覚えあるかもしれないです!
ホテル直伝の味付けなので」



意気揚々とアップルパイを見せつけて食べようと急かす。

その場で切ってお皿に乗せ、3人でさっそく食べることにした。



「……ふふ、懐かしい」



春臣ママは口に含んだ瞬間笑顔になる。



「ウェディングドレスが苦しくてあんまり食べられなかったけど、このアップルパイだけは食べたこと覚えてるの」



幸せそうか笑顔が春臣くんに似ていて、やっぱりこの人の息子なんだと納得させられる。



「すごい、同じ味……このレシピって教えてもらえる?」

「実は門外不出らしいのでレシピは教えられないです……ごめんなさい」



勢い余って同じ味って紹介したけど、あのレシピは本当は人に教えたらダメらしい。

弁護士だから大丈夫と思うけど、もしネット上にレシピを載せられたらおそらくお父さんのクビが飛ぶ。



「そっか、じゃあひと切れ残してあの人にも食べてもらわなきゃ」



謝ったけどあまり気にしてない様子。

春臣ママは残ったアップルパイにラップをかけて大事そうに冷蔵庫にしまった。