君がかわいいと言うから

「最初は私に相談してきたんだけど、主人も率先して手伝ってくれて」



きっと勇気を出したのに断られるかもしれないって緊張しただろうな。

だけどお父さんまで動いてくれて、嬉しかったはず。



「あなたはバラバラになった私たち家族を繋ぎ合わせてくれた。
ありがとう、私がこうして笑っていられるのはあなたのおかげ」



気丈に振舞って笑うお母さんの瞳が潤んでいく。

泣きそうなんだと気がついて、私もつられて涙がこみ上げてきた。



「春臣がね、あなたの作ったアップルパイおいしかったって。
今度私も食べてみたいな」

「はい!今度作ってきますね!」



だけどこういう時こそ笑顔でいなきゃ。

不安定な心を安心させる笑顔がどれほど大切か分かってる。



「風夏ちゃんお待たせ。食後のデザート買ってき……」



するとその時、リビングのドアが開いてバイト終わりの春臣くんが帰ってきた。

うわ、なんというタイミングの悪さ。

泣きそうな顔を見られたくなくて変な顔で春臣くんを出迎える羽目になった。