「春臣は昔から手のかからない賢い子で。
それをいいことにさみしい思いをさせてしまった」

「……」

「我慢させてる自覚はあった。だから仕事ばかりじゃなくて、春臣との時間を作らないといけないと思ってた」



弁護士ってものすごいハードなイメージがある。

依頼主によって仕事が変わるし、育児とは両立できそうにない。



「それから、あの子が小学校に上がった頃。
ようやく仕事に余裕ができて春臣と向き合ったら……」



彼女なりに苦労したんだ。

苦しそうな表情がそう語っている。



「あの子は私にまで心を閉ざしていた。
親子なのにどこか他人行儀で……全部自業自得なんだけど」



今までどこか、春臣くんの家族を非難する自分がいた。

だけどこうして向き合って話したら、誰も悪くないんだって気がついた。

足りなかったのは時間じゃなくて、お互いが歩み寄ることを諦めてしまったからなんだ。



「それからずっとギクシャクしたままで……。
でも、そんな春臣が初めてワガママ言ったのがあなたのことだった」

「え?」

「付き合ってる子が中傷されてるからどうにかしたいって」



そんな春臣くんが私のために動いてくれたと聞いて驚いた。