「春臣に内緒でこっそり食べたんだけど、美味しくてびっくりしちゃった」



しかもびっくりしちゃったって……かわいい。



「あんな美味しいもの作ってもらえるなんて、春臣が羨ましい。
……ああ、荷物持ったままで話しかけてごめんなさい。
私に構わずどうぞ」

「はい、ありがとうございます」



ニコニコ笑って私をキッチンへ移動するように促す春臣くんママ。

なんだ、拍子抜けした。

敵対視はされてないみたい。



「今日は何を作るの?」

「ハンバーグです。それと作り置き用でポトフを作ります」



キッチンに立つ私に向かって話しかけてくるお母さん。

「おいしそう」と呟いてまた優しい笑顔を見せる。

……こんなに優しそうなのに、春臣くんと親子関係うまくいってないのかな。



「……春臣くんは、最近どうですか」

「どうって?」

「ちゃんとさみしいって言ってましたか」

「……」



話しかけたら口が滑った。

しまった、家族仲が険悪なのを知ってて質問する内容じゃないよ。

気になってるからっていきなり核心を突いてどうする。

するとお母さんはさみしそうに笑って口を開いた。