「あ、初めまして!春臣さんとお付き合いさせていただいてます。清水風夏です!」



春臣くんのお父さんには会ったけど、お母さんに会うのは今日が初めて。

お父さんは背が高くていかにも仕事人間って感じの人だった。

でもお母さんは華美じゃないけど気を引く美しさがあって、まるで女優さんみたい。

私が挨拶すると、彼女はゆっくりと微笑む。

……うわ、すっごい綺麗な人。

本当にアラフィフ?って疑うくらい。



「あの、先日はありがとうございました」

「いえ、弁護士として当然のことをしたまでです」



認めてる場合じゃないと思って荷物片手に頭を下げる。

むむ、ウチの母親と違ってお堅い印象だな。

顔を上げると、彼女の視線が私の持ってる手提げ袋に注がれていた。



「毎週、春臣のためにご飯作ってくれてるんでしたっけ?」



綺麗だけど一体何が考えてるのか分からない。

すました顔で問いかけられたら責められてる気になる。

『私の息子に粗末なもの食べさせるんじゃないわよ』ってこと?



「いえ、全然……大したものじゃありませんけど……」

「この前大学いも作ってくれてたでしょ?」

「……あ、はい」



荷物を持った手が小刻みに震える。

構えていたら、彼女は今度はやわらかい表情で笑った。

てっきり嫌味を言われると思ったから驚いた。