「ずるいよね、風夏ちゃん」

「……なん、で?」

「本当は俺だって我慢してるのに」



吐息混じりにそう言われて、知らない感覚を覚える。

体が熱くてうずく。でもどうしたらいいか分からない。



「キス、慣れてきた?」



ふと、春臣くんは至近距離で聞いてきた。



「……慣れるわけないじゃないですか」

「そう?でも上手になってきたよ」

「っ……」

「このまま別れるのが惜しいからもっかいしよ」



春臣くんとキスするのは好き。

でもちょっと怖い。

お酒は知らないのに、ふわふわした酩酊感で酔ってしまいそうになる。



「……好き」

「うん、俺も」



酔ってるみたいだから、普段言えないことも言えるようになる。

春臣くんの口元が嬉しそうに弧を描いて、その唇がまた私に触れる。

好きと伝えたら返事をしてくれる人がいる。

嬉しくて幸せで、私はちょっぴり泣きそうになった。