君がかわいいと言うから

「さて、暗くなっちゃったし家まで送るよ。どっちの方面?」

「えっ?大丈夫です」



笑顔のまま春臣さんはそう言った。

びっくりしたから手を大きく振って否定すると、彼はきょとんとした顔をした。



「どうして?」

「いつもこの時間まで近くの喫茶店で勉強してますから大丈夫です。
それに私、狙われるほどの美人じゃありませんし」



クセで自虐すると、彼は眉間にしわを寄せた。

え、何か気に触ること言っちゃった?

すると彼は私の目をまっすぐ見つめてきた。



「なんでそんなこと言うの?君はかわいいよ」



「え………」

「って、ごめん。初対面の男にこんなこと言われても嫌だよね。
とりあえず俺の気が済まないから送る、行こう?」

「あ、はい……」



春臣さんが立ち上がったので私も立ち上がった。

だけど頭の中では今言われたことがぐるぐる巡っていて。

……かわいい、私が?

元カレにけなされた過去があるから、かわいいって言ってくれる人のことが信じられない。

でも、面と向かって言ってくれてすごく嬉しくて。



「どうしたの、風夏ちゃん?」

「あっ、なんでもありません!えっと、私の家はこっち方面です。春臣さんはどっちですか?」

「俺のことは気にしなくていいよ、明日は2限からだし」

「そっか、大学って取る授業によって時間帯違いますもんね」



嬉しさを誤魔化すように元気に喋り出して、結局送ってもらうことにした。

その後は歩きながらどこの大学に通ってるとか、普段はどんなバイトしてるとか、そんな話を聞いた。

会ったばかりだけど、彼は話し上手で聞き上手で、他愛ない会話でもとても楽しかった。