君がかわいいと言うから

「看護師だから夜勤明けにお父さんに『疲れた、淳くんのごはんが食べたい〜』ってねだるんですよ。
あ、アツシくんっては私のお父さんなんですけど」



恥ずかしくて、誤魔化すために口が達者になる。



「2人とも勤務時間が固定じゃないから、なかなか足並みが揃わないんです。
でも、お父さんは私のために作り置きのご飯を作ってくれるし、お母さんは帰り際にケーキとか買ってくれるんです。
本当は帰ってすぐ寝たいはずなのに」

「優しいんだね、お父さんとお母さん」



優しいと思う。両親があの2人で良かったって感じる。

でも、春臣くんは?



「春臣くんのご両親は料理とかします?」

「……」



春臣くんについて知らないこと。

それは春臣くんの家族のこと。

試しに質問すると、春臣くんは言葉に詰まっていた。



「あんまり、ご飯は作らないかな。昔から外食が多いかも。
小学生からは給食があったし……夜はなんでもいいやって感じ」



気まずそうな顔でそう言った春臣くん。

あー、しまった。そこまで親子仲が深刻だとは思ってなかった。

そうだよ、じゃなかったら愛情に飢えたりしない。