あんなことがあったのに、学習しない私はバカだと思う。

でも好奇心が勝ってしまった。



「お邪魔します、これ焼き菓子です」

「ありがとう。じゃあスリッパ履いてどうぞ」



夏休みもあと1週間、今日は春臣くんのご実家にお邪魔していた。

しかもふたりきり。

……何かあったらどうしよう。



「あ、ブラウニーだ。俺これ大好き」



そんな私の不安を吹き飛ばすように、爽やかな笑顔で持参した焼き菓子の箱を開けた春臣くん。



「後で食べましょ」

「いいね、楽しみ」



春臣くんは人懐っこい笑顔を私に向ける。

……かわいい。この笑顔だけは誰にも見られたくない。