ダンッダンッダダンッ
体育館に響き渡るバスケットボールのはねる音、今は体育の授業でバスケの試合をしている。
俺は素早く相手チームを抜けてリングにボールを入れ点を取った。
それの繰り返しで今日も俺のいるチームが勝った。
ほんとにつまらない。
次の授業は歴史のテスト、俺は全問解き終えると、退屈な空をただぼぅっとみつめていた。
そんな一日をおくっていたらあっという間にホームルームだ。俺はとにかく早く帰りたいと軽く呟きながら、今日のテストを返してもらおうと先生の前に立つと、先生は俺にテストを返す前に他の奴らに俺のテストを見せびらかし…
「今日のテストも坂上がトップだ、みんなも坂上を見習ってもっと勉強しろよ」
と、頼んでもないのに呼びかける。
(よくもまぁこんな漫画みたいなセリフが言えるよな、俺がこのあと何を言われるとも知らずに…)
そんなことを考えていたら、早くもヒソヒソ周りがざわめき始める。
「あいつガリ勉か!」
「毎回すげぇよな」
「勉強も運動も出来てうらやましいよな」
いい加減聞き飽きた。
今となっては慣れているため、そんな事しか思わないが、初めの頃はそれこそイラついた。だが俺は言いたいことや殴り掛かりたい衝動をぐっと抑えた。ムカつくし、イライラするし…でもそれ以上に怖いからだ。
怖いというのは相手や言葉のことではなく、怒りという感情がどれほど恐ろしいものなのかを昔さんざん思い知らされて、それ以来他人の怒りの感情や自分の怒りの感情にトラウマを持ってしまったということだ。
俺はとにかく早くかえりたいので荷物をまとめ、家に向かって歩いていた。
(今日も散々だったな…早く卒業して家で静かに過ごしたい)
俺はそんなことを思いながら家に向かっていると、えらく狭く暗い路地裏になにか光るものを見つけた。
(んっ、これは…ビー玉?えらくデカイな、色も少し変わってる、この辺に住んでる子供達が落としてったのか?)
俺は持ち主が探しに来ても困ると思い、元あった場所におこうとしたが、何故かそのビー玉に吸い込まれるように惹かれてしまい、そっとポケットにしまった。
「ただいまぁ…って、誰もいないか」
絶賛俺は一人暮らし中で、この家には誰一人として人を入れたことがない。
俺は2階の寝室に向かい、カバンを放り投げ仰向けにベットに横になると、クラスのやつに言われた一言を思い出した。
「勉強も運動も出来てうらやましい」
(……別に勉強なんて特にしてない、授業を真面目に聞いてちゃんと理解すれば解ける問題だし、運動だって毎日1時間くらい走れば体力はついて大抵のことは出来るようになる。努力もしてない奴らにとやかく言われなくはないな)
そういうムシャクシャした感情にはっと我に返って身震いをすると、着替えて外食に出かけようと準備した。
(ん?)
俺は着替えるために起き上がったが、それだけなのに何故かポケットに入れてたビー玉が勝手に落ちて転がった。
「これはさっき拾ったビー玉?なんで勝手に…」
俺はビー玉をそっと覗いて見た。
(へぇ…随分面白い子が拾ったものだ、さてこれからどうなるかな)
特にこれといって変わったことはなかったが、不意に誰かの声が聞こえたような気がしてもう一度覗いて見た。その時
🦇「やぁ!」
🕒「うわっ!だれだ!」
俺は突然どこから聞こえてくるのかわからない声に驚いて思わず声をあげた。
🦇「ここだよ!君の手の中、君が持ってるビー玉の中だよ」
🕒「はっ?」
🦇「あっはは、驚いたかい?普通人間の世界でビー玉が喋るなんてありえないもんね!」
突然喋りたしたビー玉に思わず固まってしまった。
🦇「僕はルービック・アルージュ、ルウって呼んでくれたら嬉しいな、今はこんな姿だけど元は人間なんだ。突然こんな姿にされて、もどれなくなっていたんだけど、君が拾ってくれて助かったよ」
🕒「・・・最近のおもちゃはここまでしん進化してるんだな、どういう仕組みなんだ?」
戸惑いながら落ち着いて考え抜いた末出た俺の解釈がこれだ。
(いや普通に考えてこれしかありえないだろ!ビー玉が喋るとか!)
俺は確かめようと転がしたり割ろうとしたりしてみた。
🦇「ちょっと!信じてないのはわかるけど乱暴はやめて!」
俺はビー玉と会話が成立してることにさらに驚いた。
🕒「人工知能か、まぁ…退屈しのぎにはちょうどいい。」
🦇「うん、もうそういう事にしといていいから、今から僕が話すことを全部本当のことだと思って信じて欲しい!」
🕒「はいはい」
🦇「うーん、乗り気じゃないなぁ…とりあえず改めて自己紹介、僕はルービック・アルージュ、元々人間なんだけど、ある日変な人から変な攻撃を受けて、気がついたらこんな姿になっていたんだ。だから元の姿に戻るのに君の力を貸して欲しい」
🕒「俺の?」
🦇「そっ、といっても金を盗めとか、血をかけろとかそんな難しいやつじゃなくて簡単なやつ」
🕒「随分物騒な例えだな?まっ、難しくないなら別にいいけど」
(どうせままごとだし、テキトーに合わせておけばいいか)
🦇「よかった!じゃあ君にしてもらいたいことを言うね」
🕒「あぁ」
🦇「君にやってもらいたいことは…僕に願いを叫ぶこと」
🕒「・・・は?」
🦇「だから、僕に願いを叫んでほし…」
🕒「2度も言わなくていい…」
🦇「じゃ何がわからないの?」
🕒「結び付きがわからん、なぜ俺の願いをお前に叫ぶ必要があるんだ?」
🦇「それを今から説明するんだよ」
🕒「あぁ、悪いさえぎって」
🦇「別にいいけど、それで....」
俺はこのビー玉の言っていることがまつまたくわからす、頭の中をせいりさせるのでていっぱいだった。
🦇「...ぇ、ねぇってば!」
🕒「うわっ!」
🦇「ちゃんと僕の話きいてる?」
🕒「すまんすまん、きいてなかった。」
🦇「まったく、つまりまとめて言うと、僕に君の願いを叫んでどんな方法でもいいから僕を壊して欲しいんだよ。」
🕒「こわす?さっき壊そうとしたが壊れなかったぞ?」
🦇「だから、条件がいるって言っただろ?」
🕒「………」
🦇「さっきは何もしないで壊そうとしたからこわれなかったの!これで理解出来た?」
🕒「…だいたいは」
🦇「じゃぁ早く戻りたいから、早速お願いしてもいい?」
🕒「わかった、ちょっとまってろ」
🦇「えっ!ちょ!どこいくの!」
俺は壊すための道具を取りに行くついでに何を願うか考えた。と言っても叶う保証もないから単純な願いでもいいと思うが。
でも、仮に本当に願いが叶うなら、俺が願うのは一つだけだ。だから…俺の願いは…
俺は工具箱からハンマーを取り出して部屋に戻ってきた。
🦇「あっ!やっともどってきた!」
🕒「おそくなってごめん、願いは本当になんでもいいのか?」
🦇「君が心から本当に叶えたいと思う願いならね」
🕒「わかった。じゃあ始める。」
🦇「おやっ?さっきまで乗り気じゃなかったのに随分な気の変わりようだね?」
🕒「…やっぱりやめた方がいいか?」
🦇「ごめんごめん!」
🕒「はぁ…それじゃぁいくぞ、俺の願いは…」
🦇(何かな何かな~♪)
🕒(もしほんとに叶うなら俺の願いは一択だ)
🕒「スゥッ……俺の願いは!どんな方法でも構わない!俺を殺してくれ!」
俺は深呼吸をして、ビー玉に向かって叫び勢いをつけてハンマーを振り下ろした。

ガキン!

俺は条件道理にやってみたが、ビー玉にはやはりヒビどころかキズひとつつかなかった。
俺は何度も割ろうと試みたが、それでもダメだった。
🕒「フッ、やっぱり子供だましのおもちゃか、何をやってるんだ俺は…」
🦇「おーい、1人でブツブツいってるけど、一応この方法であってるんだよ。」
🕒「ならなんで人間に戻らない」
🦇「それは、君が心から死ぬこと、殺されることを望んでないから。言ったでしょ?心から望んだ願いじゃないと壊れないんだって。」
🕒「………そういう設定なのか?」
🦇「やれやれ、まだおもちゃだと思ってるんだね。じゃあ、ひとつ僕がおもちゃじゃない証明してもいいかな?」
🕒「証明?」
🦇「そ、証明するね!まず1つ目、普通のビー玉やおもちゃなら、そのハンマーで叩けば1発で壊れたり砕けたりするよね、なんで僕は無傷なんでしょうか?」
🕒「なっ!…」
🦇「証明の2つ目、僕らさっきから普通に会話出来てるよね?いくらこの世界の人工知能が進化してるからって、ここまではっきり会話は成立するのかなぁ?しないよね!」
🕒「………」
ことばがでてこなくなった。この現状を突きつけられ、ありえないことが実際に起こっていることを実際に証明されたからだ。
🦇「ねぇ…そろそろ僕のこと本当に信じてくれないかな?」
🕒「ははっ、こんなの間違いだ、そうさ腹が減って上手く思考が回ってないんだ、早く飯食いに行っていろいろまとめよう。」
俺は認めたくないあまりに、着替えて出かけることにした。
🦇「え!どこ行くの!置いてかないでよ!」
🕒「いや、さすがに幻覚連れて行くとか無理でしょ。」
🦇「もぅ!幻覚じゃなくて現実!僕は存在してるの!大人しくしてるから、ひとりにしないでよ!」
🕒「・・・・・ほんとに大人しくしてるか?」
🦇「うん!やくそくする!」
🕒(置いていくのもなんか怖いし)
🕒「・・・わかった、だけどほんとに大人しくしてろよ」
🦇「わかった!」
俺は小さな袋にそのビー玉を入れ、鞄に入れると家を出た。