朝。

アラームよりも先に目が覚める癖は

いつから付いたのだろう。

ベッドから降りて

カーテンを開けると

窓の外の山桜は満開になっていて

もう春だったという事を

改めて感じる。

綺麗な景色。

それでも、

春は…

…嫌いだ。






4年前の春、家族で交通事故にあった。

両親と弟は死亡。

俺だけ重傷だった。



俺の住む家は母の実家だ。

古風な大きい家。





母は華道の家元の娘で、

俺は母の生ける花が好きで、

よく真似をした。

父は厳しい人だったが、

どんなに忙しくても、

行事には必ず来てくれる

そんな人だった。

弟はスポーツ万能で

人懐っこくて

誰とでも仲良くなるやつだった。

幸せだったけど、

そんな家族と比べられる

俺も、辛かったんだ。





________家族が死んだとき、


どうして自分じゃなかったのか

神様はどうして俺にしなかったのか

自分が生きてよかったのか

そんなの中学生のガキになんて分からない。

でも、祖母は泣きながら俺に話した。

『3人の分もしっかり生きていきなさい。あんただけでも無事で良かった。』

この言葉で、考え方が変わった。

生きてるって事はありがたい事で、

俺も誰かに必要とされてると思うと

すごく嬉しかった。

感情が表にあまり出ない俺でも

涙が止まらなかった。





『伊織ちゃ〜ん。朝ご飯できたよ〜。』

祖母はいつもこうして呼びに来てくれる。

この優しい声と、

この優しい微笑みが_______




俺にとって、1番安心できる瞬間だ。