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 時代は進み……60年後――――

 場所は病室、そこには体調不良で入院をしている老人が一人。名を小早川拓海。
 そこに勢いよく駆け込んでくるのは孫の小早川幸子。


「拓海おじーちゃん!! これ!! ルアックコーヒー!!」
「幸子……病室では静かにせんか」
「いいから、いいから!」
「ジャコウネコは既に絶滅していて、今あるのは偽物(イミテーション)だけ……これ本物じゃないか!」
「お小遣い溜めてさ! 時間跳躍(タイムリープ)してきたの!!」
「お前ってやつは……儂の事なんか気にせず遊びに使えばよいものを……有難うな、幸子。どれ一口飲んでみるとするか」


 老人は、水筒を開けてカップへ注ぐ。芳醇な香りが部屋を包み込んだ。
 まずは、その香りを鼻で堪能し、次に不純物のない水色(すいしょく)を楽しむ。そして深呼吸を一つ。つと、飲み口に唇を合わせようとしたとき――――思い出した。


「砂糖はあるかい?」
「あるよ! この袋!!」


 幸子は、おもむろに白い粉が入った袋を取り出す。しかし勢いのあまり中身が飛び散ってしまった。その一部は病院に備え付けてある毒見用の器具の中に入り、告げた。


『rocksalt、岩塩、ミネラル含有ヲ確認。食用ニ加工サレテイマスノデ、安心シテ利用シテクダサイ』

「本当にお前は儂が付いてないと駄目じゃな、あの時(・・・)からついつい助けたくなる」


 老人は二カリと笑った。