□◆□◆□◆□◆
とりあえず作っていこう。戸棚から豆を取り出す。やっぱり高級な豆は違うね、袋を開けてないのにほんのりと香ばしい良い匂いが漂ってきた。でも開けたら少し気持ち悪くなった。良い匂いでも深すぎると流石に辛い。
息を止めながら、適量の豆を掬い取って挽き機に入れる。
「あまりアレな色じゃない……?」
「脱穀機で外殻パーチメントを取るからね。コーヒー豆として使う部分はアレには触れてないよ」
「あ、そうなの? なーんだ、バッチくないじゃん!!」
「これでも汚いっていう人のいるけどね」
最高級コーヒー、コピ・ルアクって言っても淹れ方は他とは大して変わらない。豆を超極細で挽いてパウダー状にした後、ティースプーンで2~3杯分をコーヒーカップへ直接入れる。そしてお湯を入れてかき混ぜる。表面に浮いていたコーヒーの粉末が完全に沈殿したら上澄みを掬って完成。
「……よし、完成かな」
「おおッー!! すっごくいい香り!!」
「待って砂糖を持ってくる」
「これのこと?」
それらしき包みを取ったサチコさんは、水筒を取り出してゆっくりと注ぎ始めた。本当はすぐに飲んでもらいたいけど、飲む本人が居ないんじゃしょうがない。
そういえば、結局誰に飲んでもらうんだろう?今なら勢いで聞けそう。
「ねぇ、そういえば 『 跳 躍 マ デ 残 リ 3 0 秒 ヲ 切 リ マ シ タ 。 速 ヤ カ ニ 跳 躍 行 動 ヘ 移 ッ テ ク ダ サ イ 29…28…27…26…25…24…23…22…21…――――』
聞いたこともない電子音と共にサチコさんの身体が発光し始める。足元には、光の輪とカウントダウンを告げる数字が浮かび上がってきた。
「わっわっ!? やばい!!」
「えっえっ!? なんですかこれ!?」
「き、企業秘密!! とにかくありがとね!! えーと……君の名は?」
「今!? 拓海、小早川拓海です!!」
「うそ!? もしかして拓海おじ――――」
『 跳 躍 ヲ 開 始 シ マ ス 』
