はしゃぐノエルとキキは、人をかき分けて進んでいく。その時、ノエルはスーツを着た男性とすれ違った。その瞬間に、ノエルは足を止める。

「ノエル?」

キキの声も、ノエルの耳には届かなかった。笑顔は消え、嫌な予感に心臓がドクドクと脈打つ。それが数分ほど続いた。

「具合でも悪い?大丈夫?」

「ごめん、大丈夫。もう平気……」

スーツを着た男性は、お祭りにたくさんいる。ノエルは気にしすぎだと言い聞かせ、また歩き出した。

「まだ魂は奪えないのか……」

ポツリとすれ違った男性が呟いたことに、ノエルは気付いていなかった。



綺麗で食べるのがもったいない飴細工を見たり、一年の運勢を見てもらったり、ドレスやアクセサリーを見たり、ノエルとキキは変わらずお祭りを楽しみ続けた。

「たくさん買っちゃったね〜」

「うん、でもとっても安くてお買い得でしょ」

お昼ご飯にジャガイモのガレットを食べながら、ノエルとキキは自分たちの買ったドレスの袋を見つめる。大きな袋には、十着ほど入っていた。