止めたくても、腕を縛られ、男性に押さえつけられ、ノエルは泣き叫ぶことしかできない。ただそれが悔しかった。

ドクン、とノエルの心臓が音を立てる。人間のものではない鼓動が、ノエルの体の中から響いていた。同時に、頭の中で声が聞こえてくる。

「殺せ、あの人間どもを殺せ。あいつらは悪だ。死んでも誰も悲しまない」

「親友を助けたいんだろ?何のために契約をしたと思っている?」

その時、ノエルは契約の全てを思い出した。それはーーー初めて憎しみを覚えた時に悪魔になるというもの。そして、その魂をテオを捧げるということ。

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ノエルは叫ぶ。まるで、狂ったように叫び続ける。すると、ノエルの背中に激しい痛みが走った。やがてノエルの背中がパックリと割れ、テオと同じ翼が現れた。腕を縛っていた縄が引きちぎれる。

「うわぁぁぁぁ!!」

「何だ、この化け物!!」

男性たちは怯え、ノエルを離す。キキは当然、驚いた目をしていた。